39話 田中シャインピースは頭が悪い!
39話 田中シャインピースは頭が悪い!
何も理解できていないナグモに、
センは、これみよがしの深いため息を吐き散らかしてから、
「この上なく愚劣! 馬と鹿がエンドレスワルツ! 脳の回路が、鈍重かつ愚鈍! たわけで、トンチキな、おたんこなす! もはや、いっしゅうまわって、いとおかし!」
アメリカ人ばりに大胆なジェスチャーを交えながら、
センは、ごうごうと、
「普通の常識的な感性の持ち主なら、涙ながらに、俺の足元にひれ伏して、クツをなめながら、『どうか、私を配下にしていただきたく存じます』と俺に永遠の忠誠を誓うところだろうがぁ! それを、貴様ぁあああ! やれやれだぜぇえええ!」
激しい怒りが、センエースの『発言の理不尽さ』を加速させていく。
「極刑に値する! 斬首、斬首、斬首! ものども! であえ、であえ! この不届き者の首をはねよ! 何をぐずぐずしておるか、ウスノロどもぉおおお! あのバカ女に後悔という言葉の重さを教えてやるんだ! コンプラなんかどうだっていい! できるだけ残忍に殺せ! 皮をはぎとって、生き血をすすりながら、電流を流し、針千本を飲ませながら、爪の間にナイフをつきたて――」
と、猟奇的なことを叫んでいるセンの後頭部に、
常識人の田中さんが、
「落ち着け、狂人」
そう言いつつ、まあまあのグーパンをぶち込んだ。
「いたぁあああ! みんな、見たな! 誰が録画してないか?! してなくてもいい! 目撃者は山ほどいる! 事案、事案、事案! 俺、こいつに、暴力をふるわれましたぁ! 被害届だしますぅ! 絶対、示談には応じないぃいいい! ははは、終わったな、田中ぁ! 法治国家においては、最初に手を出した方が負けだぁ! お前の未来は、今、シャットダウン! 法廷で会おう!」
「おどれ、最初から、性格に問題あったけど、なんか、さらに、わをかけて、エグいことになってへんか? もう、終わってんで?」
「俺が終わっているんじゃねぇ! 俺が終わっているように見えている、この世界が終わってんだぁあああ!」
と、そこで、
それまでの趨勢を黙って見守っていた、
特待生25人の中の一人、
マジメ眼鏡委員長タイプの『エキドナール・ドナ』が前に出てきて、
「ストップ。意味のない言い争いはそこまで。とりあえず、聞かせてほしいのだけれど、セン、あなた、どうして、今夜も、ここにいるの? 普通はこないわよね? ヤバい化け物が湧くって知っているんだから。……となると、何か、転移のワナにでもかけられて、強制的に、ここへ送られてきた感じ?」
そんな彼女からの質問に対し、
センは、まっすぐな目で、
「俺は単三を買いにきたんだよ」
「……はい?」
「だからぁ! 最初の三つの扉でムーア最終をつくるためにぃ! ゲーム〇ーイの電池を買いにきたんだよぉ! このぐらいのこと、聞かなくても、見て分かれぇ!」
えげつない理不尽を叫ぶセンに、
田中が、呆れ交じりに、
「なんか、もう、終わっとるっていうか、ただのヤバいヤツやな……電車でわめいとるタイプのアレやん」
「言いがかりをつけるなぁ! 俺は正常だ! 俺がおかしいってんなら、その根拠を言えぇええ! 田中シャインピースは頭が悪い!!」
「等身大が根拠の塊やないかい」




