34話 最悪を想定しろ。……俺の業は、その遥かナナメ下にある。
34話 最悪を想定しろ。……俺の業は、その遥かナナメ下にある。
「ふぁれ? ……ヨグさん、どしたん? 仕事の……時間ですよ?」
と、自分の中にいるヨグに問いかけると、
ヨグは、
(……30年も闘い続けて、体力が持つワケないだろう。私は完全にエネルギー切れだ。誰もかれもが、貴様のように、無尽蔵の根性を持つわけではない。もっと周りのことも考えて行動しろ)
(……つ、使えねぇカスだ……たかが30年でヘバるとは……それでも、アウターゴッドの王か? 恥を知れ。こっちは、同じ時間を使って上で、腕の痛みを抱えながら、それでも、健気に歯をむき出しにしてんだぞ。俺を見習え。爪の垢を煎じたものを処方してやるから、一日三回、食後に服用しやがれ)
(限界を超えてイカれた貴様と同じことを求められても挨拶に困る。貴様と同じことは、他の誰にもできない)
(やる気がないだけだろ。『俺程度に出来ること』が出来ないなんて、そんな不条理なことがあってたまるか、ボケ)
などと心の中で、文句を口にしてから、
センは、ツァールに意識を戻して、
「別に……『壊れない刃物』がなくとも……俺は……飛べる。基本、俺は孤高。誰かに救いを求めたりしねぇ。俺は俺一人で完成している。……俺の閃拳の前では……すべての命が……平伏するしかない。……さあ……絶望を数えろ……これが……俺のコスモ……閃っっ拳っっ!!」
心臓を抜かれた状態で、フラつきながら、
それでも、全力の閃拳を、ツァールに叩き込んでいくセン。
パチンと渇いた音がした。
それだけで、他は特に何もなかった。
センの拳にヒビが入ったが、
それがなんだっていうんだ。
「……ん? 今、何かしたか?」
と、ツァールは、
ご機嫌な事をほざきやがる。
「というか、貴様、なんで生きている? 心臓を抜き取ったんだぞ。普通は、そのまま死ぬだろう?」
「てめぇの中の常識なんざ知るかよ……俺を、てめぇごときの……小さなモノサシではかるんじゃねぇ……」
「ふむ、狂っているな……なるほど、だからこそ、この心臓の穢れか。……とんでもなく気持ち悪いな……邪悪なのは理解していたつもりだったが、ここまで醜いとは……貴様はいったい、どれだけの業を背負っているのだ……」
「最悪を想定しろ。……俺の業は、その遥かナナメ下にある……」
「ふむ」
と、一度、納得すると、
ツァールは、センの心臓を、
あむっと、口の中におさめて、
そのままゴックンと飲み込んでしまった。
すると、
「ヒャッハァアアアアアアア!」
ピーっと、ツァールの全身から黒い蒸気が噴き出した。
「ははははははは! これはいい! なんという邪悪さ! これほどの毒……そこらの神格では扱いきれないだろうが……私ならば、ギリギリさばける! ははははは! いいぞ! 素晴らしい! これは……もはや、アウターゴッドの領域にいるんじゃないか?!」
と、調子にのっているツァールに、
センは、
(アウターゴッドを侮りすぎだろ……確かに、ちょっと膨らんだが、今のてめぇは、ウムルより強いぐらいだ……そこそこの強化だが、アウターゴッドと比べればゴミ……)




