33話 狂気の色は隠せねぇ。
33話 狂気の色は隠せねぇ。
「……ぷはぁ」
と、深い呼吸と共に形になる、GOOの体。
色合いは青で、見た目はロイガーの色違い。
その化け物は、センとナグモをチラ見して、
「まずは、自己紹介といこうか。私はツァールという。この地で殺されたロイガーとは双子の関係にある。どちらが兄かは聞かないでくれ。その辺は、繊細な問題なんでね」
と、軽く自己紹介をしてから、
「どうでもいいと言えばどうでもいいのだが……一応、聞いておこう。ロイガーを殺したのは……お前らか?」
その問いかけに対し、
何も言えずにかたまっているナグモ。
彼女は、わけもわからず、小さく、首を横にふることしか出来ていない。
そんな彼女を尻目に、
センは、腕の激痛に耐えながら、
全力の『キョトン顔』を仕上げて、
「ロイ……ガー? はい? えっと、俺は、それが、おいしいかどうかを聞けばいいんですかね?」
と、全力でとぼけていく。
が、
ツァールの視線は、センをロックオンして、
「……わずかに……ロイガーの死の気配を感じるな……狂気の色は隠せない。貴様がロイガーを殺したな。直接的に貴様が殺したかどうかは知らんが……少なくとも、ロイガーの死に関与はしている様子」
「いいえぇ! マジで違います!」
センは、全力で首を横でふりながら、
「ロイガーを殺したのは、『田中なんとか』ってやつですよ! あいつは悪いやつでねぇ! 俺も、散々、煮え湯を飲まされて、困ってんですよ! どうです! ここは、同じ敵を心に抱く同士、結託するというのは? あんたの兄弟を殺した、あの鬼畜ド腐れ畜生を殺すために、俺が出来ることも、きっとあるはず。というわけで、ともに、あいつを殺しましょう。ああ、そうしましょう。そうすべき。そうしない理由がどこにあるというのか、いな、断じてない!」
「別に、誰がロイガーを殺していようと、どうでもいい。それよりも……」
センの反語をサラリとシカトして、
ツァールは、
ゆっくりと、センのもとに近づいてきて、
「……貴様の中に……何か、『濃い邪悪さ』を感じるな……毒々しい醜悪さ。激しい憎悪。精緻な悪意。凄まじく黒いスピリット。……マテリアルはゴミだが……貴様の中には、なかなか悪くない闇がまたたいている……面白い。そいつは、貴様のようなゴミの中にあっても輝かない、私がもらってやろう」
そう言いながら、
ツァールは、
センの胸部の腕を突っ込んだ。
「ぐべへぇっ!」
再度、心臓を奪われるセン。
その猟奇的な光景を見つめながら、
センは、タメ息交じりに、
「ちっ……なんなんだよ、糞が……俺の心臓は、どっかの桃姫かよ……何度も、何度もさらわれやがって……」
イライラしながら、
激痛を、根性一つで、どうにか抑え込んでから、
センは、
(上等だ……ボケ、ごらぁ……ここまできたら、もう、とことんまで、いったらぁ……行くぞ、ヨグぅうう!)
と、『ヨグナイフを召喚して、ツァールの眼球にでもつきたててやろう』――と思ったのだが、しかし、ヨグナイフは召喚できなかった。
「ふぁれ? ……ヨグさん、どしたん? 仕事の……時間ですよ?」
と、自分の中にいるヨグに問いかけると、
ヨグは、
(……30年も闘い続けて、体力が持つワケないだろう。私は完全にエネルギー切れだ。誰もかれもが、貴様のように、無尽蔵の根性を持つわけではない。もっと周りのことも考えて行動しろ)




