表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
816/1228

32話 命令するけど、今回の命令は、できれば忖度してくれ。


 32話 命令するけど、今回の命令は、できれば忖度してくれ。


「ちょっ、うるせぇ……腕一本でガタガタわめくな……こっちは、何度も両手両足吹っ飛んで、内臓も頭も、幾度となく爆散して、それでも、たいして文句も言わず、歯ぁ食いしばって生きてんだぞ。そんだけ苦しい想いをして、それでも世界を守ってきた、そんな俺の栄誉をたたえ、拍手喝采をおくってこい。片腕だから拍手できないって? 心配すんな。心が正しい形をなせば、両腕なくとも、拍手の音は世界に鳴り響く」


 と、むちゃくちゃな要求をしていくセン。

 人間失格の影響なのか、だいぶ性格が終わっている。

 根本は変わっちゃいないが、とげとげしさが増している。


 表情も、セリフも、すべて、どうみても、ヤバいDQNです。

 本当にありがとうございました。


「ああああああっ!」


 と、センの発言など一切シカトで、ずっとやかましい彼女を尻目に、


「くそが……」


 と、しんどそうに天を仰いでから、

 誰にも聞こえない程度の小さな声で、ぼそぼそと、


「世界さんよぉ……き、聞かなくてもいいけど、一応、命令だ……あ、あいつの痛みを俺に……よこせ。め、命令はしたけど……この命令は、そんなに頑張って聞かなくてもいいぞ。ていうか、忖度してくれ。これは、巧妙にシカトすべき案件だ。難聴系主人公よろしく『え? なんて?』と聞き返してくれれば、それで事足りる。わかるな。わかるよな?」


 と、もう、『何が何だかわからない命令』を世界にくだす。

 『仙豆をよこせ』という命令は完全にシカトした世界だが、

 しかし『今回の命令』に関しては、なぜか、ウッキウキで、


「ぐぉおおおっ!」


 センの右腕に激痛が走る。

 別に爆散しているわけではないが、爆散した級の痛みが腕に広がる。

 世界は、まるで、長年仕えてきた老執事のような俊敏さと完璧さでもって、センエースの命令を遵守したのだ。


「痛ぇ、痛ぇ、痛ぇ、痛ぇえええええ! もぉおお! なんで、こんな、シカトしてほしい願いには従順?! ウザすぎんだろ、くそったれぇええええ! 俺のことが、そんなに嫌いか、世界! そんなに嫌いなら、いっそ、殺せぇええ! 俺よりも、この世界の方が、よっぽど、人間失格なんですけどぉおおおお! もぉおおお!」


 と、ピーピーわめきながら、激痛にもだえているセンの視界のすみで、

 ナグモが、


「あ、あれ……え? ……え、痛……いた……い? あれ? 麻痺……してきた?」


 涙を流しながらも、しかし、

 『痛みが消えていること』を疑問に思いながら首をかしげる。

 己の中の痛みと向き合うことに必死で、

 センが『ワーワー叫んでいること』には気がついていない。


 そんな、ワケの分からん『混沌とした状況』の中、

 ナグモの腕を媒体にして生成されたジオメトリが、

 怪しい光を、強めに放出する。


 その光は、空中で結集して、

 そして、


「……ぷはぁ」


 形になる。

 GOOの体。

 色合いは青で、見た目はロイガーの色違い。

 その化け物は、センとナグモをチラ見して、


「まずは、自己紹介といこうか。私はツァールという。この地で殺されたロイガーとは双子の関係にある。どちらが兄かは聞かないでくれ。その辺は、繊細な問題なんでね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ