28話 俺のワガママを無視するとは何事か! 恥を知れ恥を!
28話 俺のワガママを無視するとは何事か! 恥を知れ恥を!
「おっと」
流石に、もう自分を支えることが出来なくなった。
普通に気が抜けて、その場にドカっと尻餅をついた。
ケツの骨に、でかい衝撃がきたが、そんなものを気にしている余裕はなかった。
(あ、やべ……動かんわ……)
限界を超えて戦い抜いた体は悲鳴を上げる余裕すらない様子。
ピクリとも動かず、その場で横になるセン。
(ぁああ……しんどい、しんどい……ぶっちゃけ、灰になってくれて、マジで助かった……アレ以上は、たぶん、無理だった……)
と言った感じの『喉元過ぎれば熱さを忘れる』の逆みたいな状態に陥るセン。
『喉を通っている時は我慢できるのだが、しんどいことが過ぎさって場が落ち着くと、我慢想定の閾値が一気に低くなる』。
ちなみに『あれ以上はたぶん無理だった』などと、口では言っているが、
実際のところ、おそらく、壊れたナグモが折れるまで、永遠に付き合っていたことだろう。
『自己中心を貫く』というのは、それだけの覚悟が必要。
(しんどい、しんどい……もう指一本も動かせねぇ……)
これはメンタルの問題であって、体力が残っているかどうかは関係ない。
『動けないと思ったら、人は動けなくなるもの』である。
この状況の中で、センは、
「……世界よ、命令だ。仙豆くれ。この俺様の命令だ。シカトすんなよ」
と、世界に対して、とびっきりのワガママをぶつけていく。
『一瞬で、傷も体力も回復するチート豆をよこせ』という、えげつない無茶ぶりだが、しかし、『一瞬を30年にしやがれ』というパワハラよりはマシな気がする。
――のだが、
しかし、世界は、センをシカトする。
『豆をよこせ』という今回の命令に対して、世界は完全なる沈黙を尊ぶ。
そんな世界のスタンスを理解したセンは、
「……わ、わかった、わかった。パワハラが過ぎたな。そう不貞腐れるなよ。とりあえず、回復させてくれ。それだけでいい。このぐらいだったら、聞いてくれるよな? ヨグを呼んだり、一瞬を30年にするよりは、だいぶゆるいお願いだろ? な?」
と、優しく命令するが、
しかし、それでもシカトに変化は起こらない。
――世界は、うんともすんとも言わない。
そんな、頑なな世界に対し、
センエースの邪悪さが沸騰する。
「おい、ごらぁああ! なに、シカトこいてんだてめぇ! ケツの穴から手ぇつっこんで、奥歯ガタガタいわしたろかぁあ!」
と、強めの命令を叫ぶセン。
もはや、何を言っているか分からないレベルのパワハラ。
言うまでもないが、世界は、センを完璧にシカトする。
世界は、別に、センが怖くて、センのパワハラを聞いてやるわけではないから、どれだけ脅されようと、関係ない。
「……く、くそがぁ……人間失格の具体的な発動条件がわからねぇ……とりま、どんな命令でも実行できる的な感じではねぇっぽいな……しかし、回復一つもしてくれないのに、よくもまあ、一瞬を30年にしてくれたな……」
などと、ブツブツつぶやきつつ、
(発動条件はなんだ? 命令で実行できる範囲は、どのへんまでだ? ヨグを呼ぶことと、限定的なソウルゲート状態にすることはできた……どっちもやべぇ効果のはずで、難易度で言えば、最上級クラスのはず……特に限定的ソウルゲート化なんざ、やべぇだろ……究極超神化7状態の俺でも不可能な異次元の魔法だぞ……)




