23話 ワガママを押し通すという穢れ。
23話 ワガママを押し通すという穢れ。
「覚悟って言葉は、もっと重たいんだよ。おためごかしや、使い勝手のいい装飾品として使うのは命に対する冒涜だ」
「貴様がそれを言うのか。中身のない大言壮語しか吐かない、からっぽのウソつきが」
「だからこそ叫べるんだよ。『ワクの中に納まっている正直者』じゃあ通せない無様を……世界一みっともない厚顔無恥を……これからも、ずっと叫び続けてやる。それが俺の覚悟だ。ピエロの意地をナメんじゃねぇ」
「……はっ。一丁前の事をほざいてはいるが、実際のところ、生命力が膨大に縮小されたな。愚かな話だ。先ほどまでであれば、確かに、『究極の穢れに飲まれる危険性』こそあったものの、しかし、美しいほどに大きな輝きだった……今の貴様は、重たいだけで酷く脆い。私がその気になって異次元砲でも放てば、貴様はすぐにでも消滅してしまうだろう」
「やってみろよ。たぶん無理だから。『その気になったらどうこう』ってレベルの話をするゴミは、その気になっても何も出来ないって相場が決まっている。出来るやつは、前置きを口にする前に行動をしている」
「はっ。本当に、口だけは達者だな」
鼻で笑ってから、壊れたナグモは異次元砲を放った。
確実に死ぬであろう一撃。
そんな、明確な死に対して、
センは、右手を前につきだして、
「オメガバスティオン」
なんだかよくわからない言葉を口にした。
別に、その言葉じたいに意味はない。
現象に対して、一応、名前をつけているだけ。
そして、その現象を実行するという意志を、わかりやすく形にしているだけの話。
――アッサリと、霧散してしまった、壊れたナグモの異次元砲。
それを見た壊れたナグモは、
「……っっ」
目を見開いて驚愕する。
――オメガバスティオンは、実のところ、『壊れた者』の方が、成功率が高い。
凝り固まった自意識を軸に、極限の集中力を豪速回転させないと発動しないものだから。
正常では機能しない。
そんな『バグ技』。
異次元砲を消失させたセンは、
「てめぇの攻撃には、もう価値がない」
ゴキゴキと首の骨を鳴らしつつ、
「最上位のアウターゴッドを根こそぎボコボコにしてきたこの俺が、お前みたいなカスモブごときに殺されると本気で思ったか? 主人公補正なんかなくても、テメェ程度には流石に、負けねぇよ。テメェと俺じゃあ、存在の格が違うんだ。『主人公でも届かない不可能』を鼻歌交じりにブチ殺す。それが俺のプライドじゃい」
膨れ上がった自意識がセンエースの器を加速させる。
もともと高かったプライドが、より鋭利になっていく。
傲慢さに拍車をかけて、
センエースは、ワガママを宣言する。
別に意味はないけれど、天を仰ぎ、
特に意味はないけれど、片手を空に向けて、
「感じるぞ、ヨグ……さっさと帰ってこい。疲れているかどうかなんざ知らん。難しいかどうかも聞いてねぇ。とっとと、俺の手の中に戻れ。これは俺の命令だ。舞い散る閃光センエース様の命令をシカトするなんざ許さねぇ」
傲慢さをおしつけられて、
『アウターゴッドの王様』は、
「……やれやれ、なんと厄介な神様か」
――『ここではないどこか』から、這い出てきて、
「呆れるほど自己中心的で嘘つきで根暗で高圧的な、最低な神様。けれど、まあ、そのぐらいでなければ、守れないものもあるだろう」




