18話 本音を言おう。使えない女に興味はねぇ。
18話 本音を言おう。使えない女に興味はねぇ。
「……こわ……れる……いやだ……それは……いやだ……それは……違う……」
否定し、拒絶しても、しかし、結果は変わらない。色違いナグモの肉体が、ビキビキと音をたてて変形していく。そして、5秒が経過したところで、元の形状を無視したスタイルに変貌していた。
――その様は、まるで、究極の邪神。
「その姿……アポロギスに似ている……気がしなくもないな……」
そんな感想をこぼすセン。
アポロギスは、究極超神だったころのセンが倒した邪神の頂点。
『破滅をかたどったような奇異な姿』になった、壊れたナグモ。
壊れたナグモは、静かな視線で、センを捉えて、
「返してもらう。私の根幹。それがあれば……私は、完全なる存在になれる……」
などと、ナメたことを口にして、
一瞬でセンとの距離をつめた。
そして、センの腹部に、かるいボディブローを一発。
「うえっ……」
一撃でめまいがした。
大量の血を吐いて膝から崩れ落ちそうになるセン。
だが、寸でのところで耐えて、
必死に、さだまらない視界に耐えながら、
その場から距離をとろうと足に力をこめる。
その様子を横目に、
壊れたナグモは、
「もういいだろう。流石に無意味だと思わないか? 貴様では、この女を守れない」
そんな壊れたナグモの言葉を受けて、
センは、
「誰も……守りたいとは言ってねぇ。……本音を言ってやる。この女がどうなろうと、知ったことか。家族でも、恋人でも、友人でも、知り合いでもなく、それどころか、タイプですらなく、利用できる資産家でも政治家でも社長でもない。そんな、俺的に何の価値のない使えない女が死のうが生きようが、どうでもいい。……俺が守ってんのはなぁ……ずっと、ずっと、最初から一貫して、俺の意地だけなんだよ……」
ふらふらしながら、
朦朧としながら、
それでも、センは、
「俺が通したいのは、いつだって、俺のプライドだけ。ここで逃げるのも、自分が守りたい意地の一つも守れずに死ぬのも、俺にとっては、どっちも同じクソだってだけの話……俺は大した男じゃねぇが、しかし、『ゴミ以下の見栄』だけは一丁前でなぁ。たとえ、干からびるほど空腹でも楊枝を口にくわえていたい。たったそれだけの、実はとことん無様な話。そんだけぇ!!」
その叫びに呼応するかのように、
――『先ほど、センの中で復活したプラチナスペシャル』がまたたく。
ちなみに、それは、
『病的な高潔』の一部だった。
『病的な高潔』が保有している真の可能性――の一部。
それこそが、『世界の根源に愛されるようになる』というもの。
『世界の根源』とは、『あらゆる抽象的概念』を『全て統合したもの』であり、つまりは、とても、ふんわりとした言葉。
『世界の根源』とは、なにも『コスモゾーン』に限定しない。
人の意志の中核にあるもの。
魂の奥にあるもの。
森羅万象に神が宿るという八百万的な思想そのもの。
『世界』という枠組みを構成する上で『重要である』と認識されているすべて。
『その中』の『根っこ』にあるもの。
特に『コレ』と一言で断言することはできない、とても大きな概念の真髄。
――そんな『世界の根源』に愛される。




