16話 金、金、金だ! 俺は金がほしいんだよ!
16話 金、金、金だ! 俺は金がほしいんだよ!
「俺を壊したかったら、アウターゴッドの群れをつれてこい。『夏場に放置した生魚』に沸いたウジぐらいたくさんの『大量のアウターゴッド』に襲われれば、流石の俺も、死にかけるかもな。ま、それでも、ギリ、死にはしないと思うが。銀河を埋め尽くす数のアウターゴッドに、異次元砲の弾幕を張られても、俺は、なんだかんだで、生きているだろう。それが俺クオリティってやつだ。すごいな、俺。どうなってんだ?」
ファントムトークがとまらない。
そんなセンに、
「もうほとんど死にかけているくせに、何言ってんだ、カスがぁあ!」
色違いナグモの猛攻が加速する。
もうちょっとで削り切れる。
――そう確信を得てから、いったい、どれだけの時間が経過しただろう。
どれだけの攻撃をあびせても、センエースは、なかなか終わってくれない。
どれだけボコボコにしても、反抗的な目で色違いナグモをにらみつけているだけ。
そんな、非生産的な時間が、10分を超えたところで、
「異常!! 貴様、おかしい! 世界がおかしい! これは、やはり夢か?! 最悪の悪夢か?!」
時間の経過で、
色違いナグモの肉体は、かなりボロボロに崩れていた。
根幹を奪われているので、自分の肉体を保つことが難しい。
そんな状態の色違いナグモを見つめながら、
センは、
「……『どくどく』をいれて、『まもる』を連打していればいいだけの簡単なお仕事……てめぇじゃ、俺の相手は役者不足極まりないな」
「ぐぬぅ……くそがぁ……」
そこで、ついに、色違いナグモがフラっとよろめく。
色違いナグモの終わりが近づいている。
「はぁ……はぁ……く、くそ……こぼれていく……せっかく……せっかく手に入れた極上の贄が……なんで、こんな……く、くそぉ……貴様さえいなければ……貴様さえ……」
全力で恨みを口にする色違いナグモに、
センは、
「そのセリフ、よく言われるよ。正直、俺自身ですら、『そのセリフ』を『俺に対して思うレベル』だから。俺さえいなければ、俺も、こんなに苦労することなくて楽なんだけどねぇ……え? ちょっと何言っているかわからないって? 気にするな。俺もそうだから」
狂気のファントムトークで世界をケムにまく。
そうやって積み上げた砂上の楼閣。
そんな脆くて拙い土台の上に、
センエースは立っている。
「まあ、とにもかくにも、確実に、一個だけ言えることがある。俺がここにいるのに、ナグモナオを奪い取れるなんて勘違いしちゃいけねぇってこと」
そんなセンに、色違いのナグモは問いかける。
「……なぜ、この女の器を……必死になって守る? そんなに、この女が大事か? 私にとっては重要な贄だが、貴様の視点では特に価値があるものではないだろう」
「まあ、確かにタイプじゃないな。俺の趣味は、『頭がおかしくない傾国のヤマトナデシコ』だから。こいつじゃ、役者が不足している。俺の理想の高さをナメちゃいけない」
「もしかして、この女は資産家の娘なのか? 守り切ることで、なにか、莫大な財産を得ることができるとか? それなら納得できる部分もなくはない。人間とは、金を求めてさまようブタだから」
「……ははは」
センは、一度笑ってから、
「ああ、てめぇの言っていることは、何も間違ってねぇ。化け物のくせに、人間のことをよぉく理解している。人間ってのは、文字通り、現金なもの……特に欲望丸出しの男は分かりやすくてなぁ。でかい家! いい車! うまい酒! それら全部、金さえあれば手に入る! 極上の女も、金さえあれば手に入る! 俺みたいな『男としての偏差値が平均を切っているようなカス』でも、金さえあれば、何でも思うがままだ! すばらしいねぇ! 自由主義、万歳!」




