表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
796/1228

12話 瞬く何か。


 12話 瞬く何か。


「……エルメスっ! 私だ! 私の命令だ! くるんだ! 私はここにいる! なぜだ! なぜこない!」


 なにやら必死になって、ずっと、エルメスを呼び続けている。

 その間、センがいくら呼びかけても完全にシカト。


「私はここにいる! 私が貴様の所有者だ!」


 そんな無意味な叫びを数十秒ほど繰り返したところで、


「……ダメだ……完全に途切れている……何者かに奪われたのか……それとも、消失した? ……いや、消失はありえない……エルメスは、『ムザキ』の因子が組み込まれている携帯ドラゴン……世界が存続している限り、絶対に消滅しない……」


 ぶつぶつと、何かをつぶやきだす。

 と、そこで、何かに気づいたような顔で、バっと顎をあげて、


「っっ!! あるっ……感じるぞ……っ……かなり小さいが……ある……どこに……どこだ……近い……っ」


 きょろきょろとあたりをうかがう、色違いのナグモナオ。

 そして、その視線は、センをロックオンした。


「貴様が? ……いや……違う……本体ではない……目を凝らさなければ見えない程度の、極小フラグメントをもっているだけ……それでも、無意味ではないか……最悪、本体が消失していたとしても、フラグメントさえ残っていれば、いつかは再生させることも可能……」


 そう言いながら、

 色違いのナグモナオは、センの目の前まで歩いてきて、


「なぜ、貴様のようなゴミの奥に、エルメスがあるのか分からないが……とにかく、返してもらうぞ。それは、私の携帯ドラゴンだ。正当なる銀河の支配者……その一等賞である私の所有物。貴様のようなカスの手にあっていいものでは決してないのだ」


 などと言いながら、

 色違いのナグモナオは、センの心臓に右腕を突っ込んだ。


「げはぁっ!」


 まったく反応できず、

 大量に吐血するセン。


 意識を失いかけているセンを蹴り飛ばして、

 手の中におさめた『センの心臓(引きずり出したフラグメントの一部)』を見つめながら、

 色違いナグモは、


「……ふはは! よし、回収……ん?」


 喜んだのも束の間、

 センから奪い取った心臓フラグメントは、

 ――『ドン引きせざるをえないほど』に穢れていた。


「な、なんだ、このおぞましい腐り方は……まるで、ウジでもわいているような有様……」


 『夏場に、ずっと外で放置していた生魚』――ぐらいの勢いで腐り切っていた。

 もともとの輝きはくすみ、ほとんど、毒のかたまりみたいになっている。


「き、気持ちが悪い……何をどうしたら、ここまで歪む……」


 と、ドン引きしている色違いナグモ。


 そんな彼女の視界の外で、

 あおむけでブっ倒れているセンは、


「あ……ぁ……ああ……」


 白目をむいて、血を吐いて、気絶寸前。

 そんな状態の奥で、


 ――『またたく何か』があった。


 極限状態の臨界点。

 純粋な死を前にして、

 センエースの奥にしまい込まれていた一部がわめきだす。

 渇いた唇がわずかに動く。


「……プラ……チナ……」


 誰にも聞こえない程度の声量。

 ほんのわずかな振動。



「……スペシャ……ル?」



 グンっと、まるで、雑な心臓マッサージでも受けたように、

 センエースの肉体が、一度、ビクンと跳ねた。

 その勢いを利用して、バっと、立ち上がる。

 まるで、出来の悪いマリオネット。

 まるで、センエースの腰についている『見えない糸』を、誰かが引っ張り上げたみたいだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ