5話 レジェンダリー級の単三。
5話 レジェンダリー級の単三。
――ヒッキが、GOOを観測した時点から、
少しだけ、時間をさかのぼる。
「俺はいったい、何をしているんでしょうねぇ」
と、夜の学校で一人、
センは、満天の星空を見つめながら、
ボソっと、そんなことをつぶやいた。
「おとなしく、家で寝ていればいいものを……なんで、わざわざ……。もう意味がわからない。ほんと、自分が分からない。もう何も分からない。わかりたくもない。私はどこ? ここは誰?」
などと、虚空に対してファントムトークをかましながら、
センは、学校の中を探索していた。
センは、とんでもなく深い深呼吸を、何度か繰り返してから、
「本当は、わかっているさ。……なぜ、俺が今日も、ここにきたのか。その理由なんて、一つしかない」
渋い表情のロートーンで、
ポツリと、
「ゲームボ〇イカラーの電池が切れていたからさ」
その発言の意図は、『最後まで、ファントムトークを貫く』という、『センエースなりの意地』である。
「その上、あの家、単三の一つもありゃしねぇ。……となれば、もう、買いに走るしかねぇだろうよ。そんな、いたって普通の買い物の途中で、つい、道に迷ってしまって、気付けば、夜の学校に迷い込んでしまった……それだけの話さ。俺こそが、真の『彷徨う冒涜』だったっていうだけの、極めて情けない話。疑問を抱くほどのことでもねぇ」
誰も聞いちゃいないのに、アホな『ファントムトーク(言い訳)』が止まらない。
あらゆる意味で、どう見ても、情緒が完全にやられてしまっています。
本当にありがとうございました。
「さて、それじゃあ、単三を探そうか……」
などと、しつこく言い訳を口にしながら、
宝箱を漁ろうと、夜の学校を駆けるセン。
数分ほど探索したところで、センは、
「おっ」
運よく宝箱を発見した。
「単三、出てこい。俺は、最初の三つの扉だけで、ムーア最終をつくると決めたんだ。俺の華麗なる『無駄な時間』のために、単三、出てこい」
などと言いながら、宝箱をあける。
中には、携帯ドラゴンの強化チップがあった。
「今は、携帯ドラゴンつかえねぇから、強化チップが一番いらねぇ……その上、ランクDかよ……ゴミの中のゴミじゃねぇか。どうした、俺の運。良くも悪くもないのが俺の運だったんじゃねぇのか? 現状、最低記録を更新してねぇか? ウゼェわぁ……ないわぁ……しんどいわぁ」
などと、ブチブチ、ダルいグチをたれつつも、
一応、センは、その強化チップをポケットにしまいこむ。
「もっと強力な単三、出てこいや。レジェンダリー級の単三、出てこい。ぶちこむとゲームボ〇イカラーがアドバ〇スに進化するぐらいの、すげぇ単三を、我は所望する」
などと、一から十まで、ガチで、何を言っているのかちょっと分からないことを垂れながしながら、夜の学校探索を続ける狂人。
さらに数分の探索をしたところで、また宝箱を発見するセン。
「おっ、また見つけた。レア獲得率は最低を更新しているが、宝箱発見率は上振れしているっぽいな……そういう意味で言うと、一応、俺の運は、通常営業で平均的って感じなのかな? いや、でも、ゴミばっかりしか拾えないなら、総合判断的には、やっぱり、下ブレな気がするが……」




