最終回 めでたし、めでたし。
最終回 めでたし、めでたし。
「……気に入らない野郎だ……」
素直な感想がこぼれ出る。
心の底から感じる、田中に対する忌避の感情。
これは、もはや、嫉妬とかいう次元ではなかった。
「くそったれが……なんで、俺じゃなくて、あいつなんだ……なんで、俺には何もないのに、あいつは全部もっているんだ……」
――センがもだえ苦しんでいる間にも、
田中は、駆け上がる速度を緩めない。
上へあがっていく。
まだ。
もっと、もっと、もっと。
そんなことをしている間に、選抜大会は、田中の圧倒的全勝で幕を閉じた。
前半の勝負では、まだ、特待生側に勝機がある試合もあったのだが、
しかし、後半の闘いでは、まともな勝負になっていなかった。
田中は、君臨していた。
完全なる王として、絶対の強者として、
特待生たちをもてあそんだ。
そんな田中を見て、
センは、
『これだけの異常な天才をゼノリカの王にすることに反対するバカはいないだろう。こいつに任せておけば、俺は楽をできる。田中よ、すべての喝采と賛美を、その身で受け止めるがいい。俺は別に、そんなものほしくない。お前を表舞台に立たせておいて、俺は裏から、俺のやりたいことだけやらせてもらう』
という、計算高い思想で自分を慰めたりもするのだが、
しかし、その奥では、常に、
『ふぁ〇きゅぅ、ブチ殺すぞ、ゴミカス鬼畜野郎がぁ!』
という、深いマイナスの感情論が渦巻いていた。
自分の心の整理がつかない。
感情論とケンカし続けるのも飽き飽きしてきた。
けれど、それでも、終わりのない純然たる嫉妬の中で、
センは、胸をかきむしる。
『人間の愚かさ』という『地獄の肥溜め』にどっぷりと肩までつかるセン。
彼の苦悩は、終わらない。
★
田中が特待生入りを果たすことに文句を口にするものは、当然だが皆無。
それどころか、『歴代最強最高の天才と名高い究極超人カンツ』を抜いて、田中こそが、『史上最高かつ最強かつ完璧な超天才超人である』という、正しい評価に落ち着いた。
その狂った情報が、表の世界で駆け巡るのはもちろんのこと、裏の世界で広まるのも、電撃の速度だった。
世界を裏から支配する300人委員会の頂点、支配者Tの『詳細な情報』を得た信者たちは、歓喜の渦に包まれた。
想像していた通りの超越者であったことに感涙する信者たち。
今まで、『支配者Tに対する恐怖心だけ』でイヤイヤしたがっていた面々も、『あまりに格が違いすぎるTの実情』を知ったことで、脱帽せざるをえなかった。
実のところ、『ひそかに謀反を計画していた不届き者』もいたのだが、しかし、Tの情報が明らかになったことで、その計画は明確に破綻となった。
『これほどのバケモノに勝てるわけがない』
『この御方こそが、正当なる世界の支配者』
世界の共通認識になった田中に対する正当な認識。
天才田中の痛烈なデビュー。
『田中シャインピースを知った世界』は、ここから大きなうねりを経験する。
何もかもが変わっていく。
絶対的支配者を得た世界の未来は明るい。
こうして、
この世界には、永遠の平和が訪れたのでした。
めでたし、めでたし。




