82話 『田中シャインピース』VS『アクバート・ニジック・J・ヤクー』。
82話 『田中シャインピース』VS『アクバート・ニジック・J・ヤクー』。
二回戦は、『一回戦を乗り越えた猛者全員VSアクバートとの異種格闘技バトロワ』という、とんでもないプログラム。
生き残っているのは田中だけなので、つまりはゴリゴリのタイマン勝負。
サッカー用の広いコート全面を使ったステージで、
田中とアクバートは互いに、バチバチと、にらみ合う。
試合開始前、アクバートが、ボソっと、
「……最初……今回の『選抜大会のプログラム』について聞いた時、一般人がカンツについていくことなど不可能だから、私の出番は一ミリもない……と思ったのだが……ふふっ」
と、笑ってから、
「人生、何が起こるか分からないものだな。基本的に、予想がつかない」
そう締めると、ユラリと武を構えて、
「ウムルを倒したお前に、私ごときが勝てる道理はないが……しかし、逃げる気はない……むしろ、昂っている。……さあ、やろう」
ほどほどに、厳かに、ぶつかりあいは始まった。
両者の拳が交差する。
――初手は、アクバートの踏み込み。
磨き上げてきた拳を、田中の顔面に向けて突き出す。
ウムルとの戦闘経験を経ている田中にとって、
アクバートのムーブは、『余裕に対応できる範囲内のソレ』でしかなかった。
アクバートは、間違いなく武の超人だが、しかし、今回ばかりは、流石に相手が悪すぎた。
田中シャインピースはエグすぎた。
――もちろん、『反射に届く反応』は、まだまだ研鑽が足りないので不可能である。
しかし、田中の場合、それでも問題はなかったりする。
『開きかけている特異な先天性』が、田中シャインピースの全てを猛烈に沸騰させる。
「感謝する、アクバート。おかげで、ワシは、もう少し高く飛べる」
まだまだ発展途上であり、かつ、『本来の天才性』はまだ闇の中にある。
目覚めたのは、『ほんのわずかな、氷山の一角』だけ。
本来有している『大きさ』と比較すれば、とても、とても、小さな光。
けれど、それは、相対的な話であって、
周囲の人間からすれば、
『とても、とても、小さな光』ですら、
眩すぎて、目を開けていられないほどの輝きだった。
武を交わし合う中で、
アクバートは理解する。
「……『苦難の永遠』を無限に繰り返しても……おそらく、私は、お前の影すら踏めない……」
アクバートは己の才覚に絶対の自信をもっている。
自分は間違いなく武の天才であり、かつ、
『無限の努力ができる器』をもっているという強い自負。
その強い自負は、今も、アクバートの中でごうごうと燃えている。
アクバートが、その自負を失うことはない。
だって、事実だから。
事実、彼は、ジェットエンジンが積まれたウサギ。
アクバートの自負は、決して愚かな勘違いではない。
リアルな話、アクバートは天才で努力家。
常人では決して届かない武の高み至っている超人。
――だからこそ理解できる世界もある。
田中シャインピースの異常性が、そこらの常人よりも、はるかに高い精度で理解できた。
こいつは別格。
本当に、次元の違う器。
ありとあらゆるすべてのパラメータにおいて格の違う存在。




