77話 センエースのことは無視。
77話 センエースのことは無視。
『感情の暴走をおこしているセン』のことは、いったんシカトの方向性で、
特待生たちは、田中との情報交換を進めていた。
どういう流れで、何が起こって、田中と閃が襲われるコトになったのか。
特待生たちが、どういう状態にあるのか。
その辺の細かい前提情報を、あらかた交換したところで、
カンツが、
「となると、田中。お前が、本物の300人委員会の支配者Tなのか」
「いや、『本物』という装飾品をつけられてしまうと、また、勝手が変わってくる。巷で流れとるような『妙な噂』は、全部、ただの尾ヒレでしかない。『弱い人間は、理想の向こう側に夢を見る生き物だった』、という、たったそれだけの話。……ワシはただの平均的男子高校生でしかない」
「がはははは! 最高位GOOを倒してしまった男を、平均というのは無理があるだろう」
「今回のコレは、たまたま、ワシの中にあるもんが目覚めたってだけの話。昨日までのワシは、ちゃんと、一般人をやっとったよ。せやから、『完璧な叡智を持つ300人委員会の支配者T』ってのは、まぎれもなく、ただの幻想。噂に言われとるような、すべてを見通す完全なる支配者なんてものは存在せん」
「これまでがどうだったかなど、そんなことはどうでもいい。お前が、これから、完璧な支配者になればいい。大いなる力には、大いなる責任が伴う。田中シャインピース。お前の可能性は、ウワサと比べて遜色ないと、ワシは思う。それだけの資質を世界のために使わないのはギルティだ。お前には、是が非でも支配者になってもらう」
「……そういうのは性に合わん。ワシは自分のやりたいことだけやらせてもらう。そもそもにして、王様なんてものは、責任感の強いやつがやるべきやろ。つまり、お前がやるべきやと、ワシなんかは思う。というわけで、頑張れ、カンツ。お前がナンバーワンだ。立派な統治者になってくれ」
「逃げられんぞ、田中シャインピース。お前は、今日から世界の王だ。これまでも、肩書的にはそうだったわけだが、しかし、これからは、正式に、この世界を統治する支配者Tになってもらう」
「だから、支配者Tなんか存在せんと言うとるやろうが。たまたま拾ったオーパーツで面白半分の実験をしたアホな高校生がおっただけ。その結果、偶然と妄想がミルフィーユになっただけ――」
「そこの部分に関しても、ワシは、ただの偶然だとは思わん。おそらく、運命なのだろう。偶然と運命は似通っているようで、実のところは全然違う。偶然に付属品は存在しないが、運命には責任が生じる。田中シャインピース。世界の王になるのは、お前の運命であり、つまりはお前の責任だ」
カンツの中で、ちゃくちゃくと、田中シャインピース支配者育成計画が進行している。
そんなカンツを尻目に、
センは、心の中で、
(……カンツは、いつだって、『ヒーロー』を追い求めている。『理想のヒーローが世界を照らす日』を夢見て邁進している。カンツは諦めない。『理想のヒーローが存在しないなら、自分がなってやる』という覚悟を胸に抱いている暴走機関車。その意識の暴走機関車っぷりが、『自分自身』に向いているうちは、ただ狂気的に努力を続けるだけのゴリラだが、理想のヒーローになりそうなやつを見つけた場合、猪突猛進で、『そいつ』を、より理想的なヒーローへと叩き上げようとする……)




