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74話 結局、努力なんてものは、天才の足元にも及ばんのです。努力なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。


 74話 結局、努力なんてものは、天才の足元にも及ばんのです。努力なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。


「がんばれ! ウムル! 負けるな! そこだ! ああっ! 違う! そうじゃない! それじゃあ、田中の思うつぼだ! ああ、どうして、お前は、昔から、ずっとそうなんだ! そうじゃないだろ! もっと、こう、アレだろ! 何がどうとは言えんけどぉおお!」


 手に汗握って、必死になってウムルを応援する。

 ここまで、どうにか我慢していたセンだったが、しかし、流石に限界だった。


「がんばれ、ウムル! 負けるな、ウムル! お前が積み重ねてきたものは、天才性ごときに負けないということを教えてやれ! ああ、ダメだ! くそぉおお! 負けるのか! また努力が天才に負けるのか! あっていいのか、そんなこと! こんな理不尽が許されていいのか! 誰か、その天才に教えてやってくれ! 努力は才能より尊いと! 先天的なギフトよりも、後天的な奮闘の方が上だってことを! ……あ……ああ……ダメだ……終わる……ウムルが終わってしまう……ちくしょう……ちくしょおおおおおおおおお!」


 悲痛の叫び声をあげるセン。

 その慟哭を隣で聞いていたダリィが、

 眉間にグっとシワの寄った顔で、

 センの胸倉をつかみあげて、


「てめぇ、なんで、ウムルを応援してんだぁああ! 田中を応援しろやぁああ!」


「いやだ! 天才の応援など、死んでもごめんだ! あいつは、この俺を超えやがった! 努力の狂人であるこの俺を! 天才ってだけで超えやがった! 絶対に許せるものかぁ! 殺してやる! いつか、必ず、俺が、あいつを殺す! 俺がガン〇ムだぁあああ! 俺こそがスーパーガン〇ムなんだぁああ!」


「なに言ってんだ、てめぇ!」


「俺がなに言ってるかなんて、わかるわけないだろ! 俺が何言っているか分かるやつがいたら、大したもんですよぉおおおおお!」


「大丈夫か、お前ぇえ!」


 さすがのダリィさんも、情緒不安定がエゲつないセンのことが心配になってきた模様。


 ダリィの叱責などものともせず、

 センは、


「ウムルぅうう! 頑張れぇええ! 負けるなぁああ! お前の武は、努力の結晶だ! 『ただ天才だった』というだけの、そんなくそったれに、遅れを取るなんてありえねぇだろぉ! 拳をもっと強く握りしめるんだ! ガッではなく、グっと力をこめるんだ! 丹田だよ、丹田! ウムル、そうじゃない! 根本が違う! 田中が、こうスッと来るだろ? そこをグゥーッと構えて腰をガッとする! あとはバッといってガーンと殺すんだ! そうすりゃ、田中ごときワンパンよぉ!」


 力の限り、腹の底から、必死になって、

 センは、ウムルを応援した……

 が、


「……がはっ……」


 応援むなしく、ついにウムルはガクっと膝をついてしまった。


 そんなウムルを見て、涙目になるセン。

 感情移入の末路。

 すべてを否定された気持ちになったセンは、

 血の涙を流しかねない瞳で、田中をにらみつけて、


「田中ぁあ! てめぇ、恥ずかしくないのかぁ! 『先天的に生命体カーストの頂点である』ということを、うれにふりかざして、下民の努力を、たわむれでふみにじって! お前がやっていることはあれだぞ! 『さいの河原の鬼』みたいなもんだぞ! 子供が一生懸命積み上げてきた石を無慈悲に蹴飛ばして! それの何が楽しいんだ! 鬼畜! 鬼の子! 最低の外道! 血も涙もないゲス野郎!」


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