66話 大いなる光。
66話 大いなる光。
田中の頭が、どんどん高速回転していく。
ウムルという強大な敵に触れ、エルメスというオーパーツに包まれていくことで、田中の中で眠っていた『可能性』が、ムクリと顔をあげる。
まだ、完全に目覚めたわけではない。
田中の『可能性』は、まだ、寝ぼけまなこで、ボーっとしている。
だが、それでも、十分すぎるぐらい、大いなる光だった。
キィイインッッ!
と、何かが高速で回転して、特別なエネルギーを生成している――そんな気がした。
気がしただけなのか、実際に、何かが生成されているのか……その変の明確な判断はつけられなかったが、しかし、そんなことはどうでもよかった。
『目の前に出来上がった現実』だけが、今の田中にとっての全部。
田中は、
天を仰いで、
「……プラチナ……スペシャル……」
ボソっと、そうつぶやく。
ただ、それだけのはずなのに、
田中の中の器が、輝きで満たされていく。
とんでもなく膨大な器に、とても美しい光が注がれていく。
かなり大量に注がれたはずなのに、器が大きすぎて、まだまだ容量が残っていた。
今、この器を埋め尽くすことはできない。
完璧に埋め尽くすことは、たぶん、一生不可能。
まるで、銀河のように大きな器。
その全部を、抱きしめる。
――発現したプラチナスペシャルは、『ジーニアス』。
その効果は、
『本来であれば制御しきれないほどの【人知を超えた可能性】を、遺憾なく発揮できるようになる』
というもの。
上位互換に『オーバージーニアス』という、
『本来であれば絶対に制御しきれない【大いなる可能性】を、限界以上に発揮できるようになる』
という、イカれたチートスペシャルが存在するが、
流石に、そこまでを望むのは贅沢が過ぎるというもの。
ジーニアスが発現しただけでも、破格の僥倖。
そして、その運命は、ウムルごときで対応できるものではなかった。
胎児に司法試験を受けさせるぐらい無茶な話。
田中は、一度、深く息を吸ってから、
「……随分と大きく膨らんだようやけど……どうやら、ワシの中には、まだまだ、『こんなもんではない可能性』が、ゴロゴロと隠れていそうやな……なるほど、この『狂ったような光』に対して『過剰に嫉妬してまう気持ち』……理解できんでもない……凡人の視点からすると、この可能性の大きさは……あまりにも眩しすぎる……」
『凡人の視点』を獲得したことで、
『自分の中にある可能性の大きさ』を鮮明に理解する。
新しい視点は、田中の中で、特異な器となって輝く。
もともとの『破格の資質』が、『より大きな可能性の器』を獲得した瞬間。
凡人の視点を知って、視野が広がる。
田中の中で、世界が拡張される。
えげつない天才の半覚醒。
『そこらの凡人では、無限を積んでも届かないであろう輝き』の中で、
田中は、
「……今のワシに出来ることは少ない。けど、その少ない手札だけでも、お前を殺すだけなら問題はないな」
ジャンケンで言えば、グーしか出せないような状態。
それでも、『余裕でどうにかなる』と宣言できるだけの破格さが、田中の奥にはある。




