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65話 なるほど……なるほど……


 65話 なるほど……なるほど……


「なかなか悪くない『最後のあがき』をみせるじゃないか」


「楽しんでもらえたようで、なによりやなぁ」


 田中は、ゆらりと武を構えて、


「エルメスと合体したら、ほんのちょっとだけやけど……頭が冴えてきた……『夢幻三〇士』で『の〇太』が『知恵の木の実』を食べた時の気持ちが、ちょっとわかった、みたいな感じやな」


 などと、どうでもいいセリフも巧みに使いながら、世界を翻弄していく。


「通用するかどうかは知らんけど……とりあえず、ワシの全部をぶつけさせてもらおうか。それで負けたら、まあ、それだけの人生やったということで」


 最後にそう言い切ってから、

 田中はググっと足に力をこめた。

 破格の瞬発力が、『ウムルとの距離』をコマ切れにしていく。


 とんでもないスピードだったのだが、ウムルは、余裕で対応。

 ウムルのステータスは非常に高い。

 『魔力のコントロール』が『一番の武器』なのは間違いないのだが、『総合力』でも、普通に化け物。

 とにかく、『普通に、ちゃんと強い化け物』――それが、グレートオールドワンの最高位『ウムル=ラト』。


 田中との接近戦の中で、

 ウムルは、ニタリと笑い、


「そこそこの強さだな。『ちょうどいい強さ』と言ってもいい。ぴったり、私が楽しめるレベル。弱すぎず、かといって、苦戦するレベルでもない。『楽しむ』という視点においては、最高の歯ごたえ。私を喜ばせるために、命を張ってくれたこと、心から感謝しよう」


 ぬるり、ぬるりと、粘着質な煽りを入れていくウムル。


 勝利を確信している表情。

 自分の方が圧倒的に強者であるという自負。


 大きなプライドが彼の強み。

 だが、大きすぎるプライドは、たいがい、足かせになる。

 絶対ではないが……いつだって、どんな場面においても、無駄に肥大したプライドは、重たい足かせになる可能性の方が高い。


 田中の実力を『自分の半分ぐらいだろう』と推測したウムル。

 その推測は、かなり正確だった。

 ウムルは決してバカではないし、見る目がないわけでもない。

 ウムルは、ちゃんと、田中を、デジタルに見極めていた。

 『自分よりも明確な弱者である』――その現実と向き合っていた。


 ――問題だったのは、

 田中の潜在能力が、ウムルの予想できる範囲になかったこと。

 ありえないほどのイレギュラーだったことが、現状の問題点。


 これに関して、ウムルは、正直、何も悪くない。

 ただ、田中シャインピースという男が、あまりにも、規格外に、常識はずれだっただけ。

 それだけの話。


 痛みと共に、接近戦を経験した田中は、

 ボソっと、


「……なるほど……なるほど……」


 今、この瞬間に経験して理解した『全て』を、自分の中で、血肉化させていく。

 いらないものを除外して、必要な概念だけを自分の中に落とし込んでいく。


 田中の頭が、どんどん高速回転していく。

 ウムルという強大な敵に触れ、エルメスというオーパーツに包まれていくことで、田中の中で眠っていた『可能性』が、ムクリと顔をあげる。


 ――まだ、完全に目覚めたわけではない。


 田中の『可能性』は、まだ、寝ぼけまなこで、ボーっとしている。

 だが、それでも、十分すぎるぐらい、大いなる光だった。

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