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61話 カンツは負ける。


 61話 カンツは負ける。


 これまでの経験から、特待生たちは、カンツとの差を理解していたわけだが、ウムルVSカンツの闘いを見たことで、より、深く、自分達のレベル不足を実感する。

 ウムルとガチンコでやりあっているカンツを見ながら、ヒッキは、ボソっと、


「情けないよ……カンツに任せるしかない自分が……これほどの極限状態で、何もできない自分が」


 別に何もしていないというわけではない。

 魔力残量の限界を超えて、カンツに回復魔法や支援魔法を使っている。

 ヒッキも、ずっと、頑張っている。


 だが、『頑張り方が、常に常軌を置き去りにしているカンツ』の背中を魅せつけられているから、『自分など、ほとんど何もしていないに等しい』という自虐心が芽生えてしまう。

 そんな劣等感に『意味はない』と理解できるだけの頭脳もあるのだが、しかし、それでも、無意味な自虐を心の中で飼わずにいられない。

 頭がいいとか悪いとか、そんなことで制御できるほど、心というのは易くない。


 そんな、現場を冷静に観察していた田中が、

 ボソっと、


「……カンツは負けるな……」


 と、そうつぶやいた田中。


 そんな不届き者の胸倉を、

 今にも爆発しそうな顔のダイナマイト・ダリィが、

 グイっと、掴み上げて、


「ああ? 今、なんつった?」


 カンツの手助けすら出来ない自分に対するイライラも含めて、

 ダリィは、持ち前のヤンキー力を、田中にぶつけていく。


 ゴリゴリの睨みをきかせられていながら、

 田中は、冷静に、


「カンツの方が弱い。負ける。このままやと、人類滅亡は確定的」


「人類を背負って、苦痛も絶望も全部背負って、必死に、最前線で闘ってくれている男に対して、よくもまあ、そんなふざけたことが言えるなぁ! えぇ、ごらぁあ!」


「状況の解析結果に、ふざけるもクソもない。このままやと、カンツは負ける。カンツが特待生の中でも飛びぬけて強いってのは、この状況を見るだけでも容易に分かる。カンツが負けたら終わり。誰もウムルに勝てん。だから、どうにかせんといかん」


「どうにかしなきゃいけないのは、みんなわかってんだよぉお! だから、必死になって、カンツの支援をしてんだろうがぁ! 何もできないヤツは黙って見てろ、不快だからぁあ! てめぇが、凡人らしからぬ根性を示したのは認めるが、カンツを侮辱するのはゆるさねぇ!」


「ダリィさんよぉ……おどれも、だいぶ頭がええはずやのに、なんでそんなにアホなんや。誰も侮辱してへんやろが。何も出来ん今の自分自身にイラついとるんは分からんでもないけど、ワシにあたるな。鬱陶しい」


「あぁああ?!」


 正論を言われてキレるほど愚かではない――はずなのだが、極限状態で動揺しているせいか、いつもよりも、だいぶ沸点が低いダリィ。

 さすがに、田中に手を出すほど愚かではないが、しかし、いつもより自制心がきいていないのは事実だった。


「何も出来ねぇヤツは、不快だから、黙ってろってのが、どうしても理解できねぇか、ああああん?!」


 と、バチギレの顔で、にらみつけてくるダリィに、


「携帯ドラゴンと契約する方法を教えぇ」


「あん?!」


「敗北が決まっとる状況で、指をくわえて見とるんは性にあわん。ワシも、携帯ドラゴンと契約して、命がけで闘うから、契約する方法を教えぇ」



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