57話 苦しい時こそ、むしろ笑うのがカンツの意地。
57話 苦しい時こそ、むしろ笑うのがカンツの意地。
「がははははははは! たかがその程度で、よくもまあ、大きく吠えられたものよ! グレートオールドワンの最果てなどと吠えるから、とんでもなく強大な力を想像していたが、しかし、全く大したことがない! ハッキリ言ってヌルい! この様子だと、アウターゴッドもたかがしれているかもしれんなぁ! これまで、アウターゴッドが召喚されないよう、色々と手をつくしてきたわけだが、しかし、無駄な労力だったやもしれん! たとえ召喚されたとしても、ワシの前では、ぶざまにあがく害獣でしかない気がする!」
と、虚勢をはっていくカンツ。
どんな時でも、どれだけの絶望を前にした時でも、
豪快に、豪胆に、豪気に、大口を開いて笑ってみせる。
――それがカンツの意地。
カンツの正義であり、カンツの誇り。
絶対にゆるぎない覚悟。
つまりは、ヒーローとしての心構え。
カンツは、常に、ソレを追及している。
己の『奥』にある『ヒーロー性』――その究極を求めて、日夜、たゆまぬ研鑽を続けている。
だから舞える。
ウムルほどのバケモノを前にしても、
折れることなく、他の特待生たちの盾になりながら、
その大きな背中を、世界に魅せつけることができる。
「がははははははははははははははは! どうした、どうした! 貴様は、グレートオールドワンの最果てなのだろう! ならば、もっと気合いの入った拳をぶつけてこい! 貴様の一撃など、『春先のそよ風』とたいして変わらんぞ!」
ガンガンに殴られて、顔がボコボコに腫れていっているが、しかし、カンツは、ウムルの膨大な一手・一手を、『そよ風』と言い切ってみせる。
けっして『痛くない』というワケではない。
ダメージ量はかなり膨大で、殴られるたびに、気を失いそうになっている。
だが、それでも、カンツは、叫び続ける。
腹の底から声を出して、豪快に笑いつづける。
そんなカンツに、ウムルは、猛攻の中で、
「それだけの損傷を受けていながら、それでも虚勢を張れる胆力だけは見事だと褒めてやるがなぁ! しかし、そろそろ死ぬぞ! これが最後なんだから、少しぐらいは、かわいく震えてみたらどうだ! 弱った姿を見せてみれば、私の手が、同情から、ゆるまるかもしれんぞ!」
ねっとりと煽ってくるウムルに対して、
カンツは、
「がはははははは! 貴様ごときに同情されるぐらいなら死んだ方がマシだなぁ!」
ボッコボコにされながらも、
しかし、カンツは、立ち向かい続ける。
途中で、カンツは、切り札である『コスモゾーンレリック』を使った。
装備した際の体力消耗が激しいため、ここぞと言う時にしか使えない秘密兵器。
カンツの体力は無尽蔵に見えるが、決して『無限』ではない。
ちなみに、『コスモゾーンレリック』とは、一言で言えば、『倒したGOO』を、兵器としてリサイクルしたもの。
カンツが契約しているコスモゾーンレリックの名前はモルティギアン。
死をまき散らす二丁拳銃。
「ワシが契約したコスモゾーンレリック・モルティギアンは、死霊系ショットガンのダブル。一度に発射される弾丸の数は20。その全てに即死の効果がついている。即死にレジストしたら、他の無数の状態異常の判定が行われ、すべてにレジストした場合、最大火力のダメージをあたえる。この暴露で火力がさらに増大! 貴様級のGOOが相手だと、デバフは通らんだろうが、しかし、その分、多くのダメージを受けてもらうぞ! そもそも、ワシの場合、デバフをまくよりも、火力でゴリ押しする方が性にあっている! つまり、貴様は死ぬぅうう!」




