52話 25人の救世主。
52話 25人の救世主。
「不愉快なバカガキども……貴様らの相手は、もう飽きた」
最後にそう言って、小規模の異次元砲で、二人を吹っ飛ばそうとした、
――その時、
「……ガチやべぇ根性してるじゃねぇか! 気に入ったぞ、田中!」
空から、『だいぶ小柄な同級生』が降ってきて、ウムルの頭頂部に、ガツンッと、全力のワンパンを決め込んだ。
「ぐっ!!」
大したダメージを受けている様子はなかったが、
一瞬、明確に怯んだウムル。
「一撃で終わると思うなよ! こっちの手数もなかなか多いぜ!」
そう叫んでいるのは、時空桐作学園の特待生の一人『ダイナマイト・ダリィ』。
彼のあとにつづくように、
ウムルへ追撃を入れる影が二人分。
「龍火矢ランク20」
「双鬼氷撃ランク21」
強力な練度の魔法を叩き込まれて、動きが鈍ったところで、
さらに、もう一人、追撃の影が追加。
「王魔拳ランク23」
拳に大量の魔力を込めた美少女が、
爆速で、ウムルとの距離をつめて、
ウムルの顔面に、凶悪な一撃を叩き込んだ。
さすがに、その火力を前にして、涼しい顔はしていられず、
顔面にそこそこのダメージを受けつつ、吹っ飛ぶウムル。
まだまだ、追撃の手は止まらない。
この場に現れた救世主は、1人や2人や5人や10人ではなかった。
ぞろぞろ、ぞろぞろと、無数の救世主たちが、どこからか湧いて出てくる。
その中の一人、神話生物研究会のメインサポーターを担当している時空桐作学園特待生の一人『ヒッキ・エイストレイジ』が、田中に、
「田中シャインピースだっけ? ……君、エグいねぇ。グレートオールドワンを前にして、発狂するどころか、闘気をむき出しにできるなんて」
心からの賛辞を贈る。
テキトーなヨイショなどではなかった。
ヒッキの『魂の奥』が、『田中の奥』に『強い輝き』を感じている。
そして、それは、ヒッキだけの特別ではなく、この場に集結した特待生全員が感じていた。
――田中シャインピースは、命の格が違う。
「グレートオールドワンを相手に、生身で、よくもまあ、死なずに踏ん張ることが出来たと本当に感心する。その偉業は、少なくとも、私では不可能。君はすごいよ、田中」
そう言いながら、ヒッキは、左手に持っている杖を田中に向けて、
「治癒ランク23」
当然のように回復魔法を使う。
ほんと、なんでもないことのように高位の魔法を使う彼に、
田中は、
「……お前……魔カードも使わんと、なんで、魔法が使えるん。お前だけやなく、お前ら全員……どないなってんの?」
「私たちは、全員、携帯ドラゴンと契約を交わしている。なかなか理解しがたい概念だと思うが、携帯ドラゴンは、一言で言えば、『生きていて、契約者を守ってくれる携帯電話』かな」
(携帯ドラゴン……その概念は、センの記憶にもあったな……まあ、センの記憶に触れる前から、300人委員会関係で、ちょくちょく話を聞いたことはあったが……)
「携帯ドラゴンは、全ステータスが爆裂に上がる装備品、みたいな感じでとらえると、より理解しやすいかも。育て方しだいでは、魔法を使えるようにもなるし、直接『鎧』にして身に纏い、追加でステータスを爆上げすることも可能。普通に武器にすることもできるよ。こんな風に」
そう言いながら、ヒッキは、自分がもっている杖にアイコンタクトを送る。
と、同時、杖がぐにょぐにょと動き出し、2秒ほどで、二頭身の可愛らしいドラゴンに変化した。




