表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
745/1228

48話 かなり高度なSM。


 48話 かなり高度なSM。


「お、俺の腕には、上位世界100個以上の価値がある可能性がなくもない。そんな俺の腕を持って帰る権利をあげるから、ここは、どうか、穏便にすますとかどうですかねぇ」


「まだ、おしゃべりを続けるのか。その根性だけは大したものだ」


 そう言いながら、ヒュヒュっと、さらに腕をきらめかせる。

 もう一本の腕と両足をもっていかれて、

 支えを失ったセンは、ゲチャっと、その場に倒れこむ。


「……俺、頻繁に、両手両足をなくすなぁ……しんどい、しんどい……」


 などと、奥歯をかみしめながら、そうつぶやいてから、


「田中。正しい事のために闘うことは罪ではない。話し合いなど通用しない相手もいるのだ。精神を怒りのまま解放してやれ。気持ちはわかるが、もう我慢することはない。俺の好きだった自然や動物たちを、守ってやってくれ」


 そう言ってから、ガクっと、

 『意識をうしなった感じ』で力を抜いて、目を閉じる。


 そんなセンに、

 田中は、


「せやから、その信頼と期待には、まったくもって、応えられへんねんてぇ……てか、ソレ、ワシがお前に託したい想いやねんなぁ……」


 と、しんどそうにつぶやく。

 センは、『田中がいるので大丈夫だろう』と思っているわけだが、田中は、田中で、『センエースがいるからだろう丈夫だろう』と、どこかで思っている節があった。


 『歴史(記憶)』が鎖となって、互いの精神を縛り合っているという、かなり高度なSM。


 田中は、文句を言いつつも、一応、自分の中にある可能性を解放しようと努力はしていた。


 しかし、何をどうすればいいのか、そもそも難しい話だったこともあり、

 『本来の自分』を解放するということはできなかった。


 まごまごしている間に、

 ウムルが、ヒュヒュっと、また、腕だけを、ササっと、軽く動かす。


 すると、当たり前みたいに、田中の両手両足が切断されて、

 胴体と首と頭だけになった田中は、ボトリと地面に落ちる。


 あまりにも高速の惨劇だったため、痛覚が追い付くまでにラグがあった。

 コンマ数秒の遅延時間を経て、田中は、


「ぐっどぅぁああああああああああ!」


 激痛に悶絶。


 そんな田中を尻目に、

 センは、


「もっと苦しめ! もっとだ! もっとぉ! 俺の怒りと憎しみを思い知れ! 『あの日(塾のテストで負けた日)』、俺は、もっと苦しんだんだぁあああ!」


 などと、鬼の形相で叫んでいた。

 激痛の中で、田中は、センのファントムトークに、

 正常な訂正で返す――などということは、当然できず、


「アカン! マジで死ぬ! セン、助けてくれ!」


「お前が俺をボスケテぇええ!」


 互いが互いに救いを求めあう。


 その様を見下ろしながら、ウムルが、ボソっと、


「信じられないな。そんな状況で、しかし、ずいぶんと、まだ、余裕がある様子」


 そんな彼の発言に、センが、


「余裕なんかあるわけねぇだろ……必死に意地を通しているだけだ! これだけの意地を通せる生命体はそうそういないぞ! どうだ! 俺を部下にしてみないか! これほどの意地を通せるヤツは、何かしらに、きっと使える! というわけで、回復して、武器を与えてみないか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ