47話 熱い血燃やしていけよぉおお!
47話 熱い血燃やしていけよぉおお!
「さて、と……それじゃあ、いいかげん、夜もふけて眠くなってきたことだし、とっとと終わらせようか。……教えてやるよ。神の王の力を。刮目するがいい。これが、神の王を超えた力だ。――というわけで、田中さん、張り切って、どうぞ」
そう言いながら、田中のために道を開ける、我らがセンエースさん。
ご指名を受けた田中は、渋い顔で天を仰ぐばかり。
そんな彼の心情などものともせず、
センは、
「田中さんはすごいぞ。なんせ、塾のテストで、この俺を凌駕したほどの男だ! どうだ! すごいだろう! 『世界で一番、折りにくい』と巷で噂の『俺の心』を折ったのは、世界広しと言えども、この男だけだ! 終わったな、ウムル! お前は、不幸にも、絶対に敵に回してはいけない男をブチギレさせてしまった! 次元と格が違う田中さんの前では、お前など塵芥に等しい! というわけで、俺は、この辺で失礼させてもらうよ! なんだか、とっても眠いんだ!」
そう言って帰ろうとする彼の背中に、
ウムルが、
「逃がすと思うか?」
と、嗜虐心で一杯の言葉をなげかける。
続けて、ウムルは、
「仮に、万が一、逃げることが出来たとしても、結果は変わらないぞ。どうせ、我々は、この星を跡形もなく滅ぼすつもりだからな。どっちみち死ぬ。終焉を回避する術はない」
その言葉を聞いた田中は、
一度、タメ息をついてから、
センの背中に、
「というわけらしいから、とりあえず、最後まで、あがいてみようやないか。意味ないかもしれんけど、どうせ死ぬなら、人類の意地ってやつを、魅せつけてから死のうや」
「そんな精神では、勝てる敵にも勝てんわぁ! どうせ死ぬ?! ふざけんな! 絶対に勝つんだよぉ! そう叫び続けた先にだけ道があるんだよ! 今日頑張ったやつにだけ明日がくるんだよぉおおおお! だから、田中、もっと熱くなれよぉお! 熱い血燃やしていよぉぉおお! 人間、熱くなった時が、本当の自分に出会えるんだぁああああ! だから、もっと熱くなれよぉおお! そうすりゃ、勝てるからぁあ! お前がその気になれば、秒で世界を救えるからぁあ! だから、頑張ってくれよぉお! 俺には応援することしかできねぇけどぉ! 応援だけは、必死に、熱い血燃やしていくからよぉお! ふれぇええ、ふれぇえええ! た・な・か!」
と、魂のメッセージを送るセン。
そんな彼に対し、田中は、とことん冷めた顔で、
「ワシにだけ押し付けんと、お前も頑張れぇ、と言うとるんじゃい、ボゲェ。てか、ワシのこと嫌いなくせに、ワシに対する信頼がハンパやないな」
現実逃避に勤しむセンと、それに呆れる田中。
そんな二人に対し、
ウムルは、ゆっくりと近づいていき、
「いいかげん、絶望を始めようじゃないか。おしゃべりで時間稼ぎをしたところで、何にもならないのだから」
そう言いながら、軽く腕をヒュっと薙いだ。
と、同時、
センの右腕が切断されて、下にボトっと落ちた。
当然のように、血があふれ、激痛により、発痛物質が大騒ぎ。
普通なら、のたうちまわるところだが、
しかし、センは、ギリっと奥歯をかみしめて、
「お、俺の腕には、上位世界100個以上の価値がある可能性がなくもない。そんな俺の腕を持って帰る権利をあげるから、ここは、どうか、穏便にすますとかどうですかねぇ」
「まだ、おしゃべりを続けるのか。その根性だけは大したものだ」




