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43話 神話生物対策委員会は変わった。


 43話 神話生物対策委員会は変わった。


『我らの真のボスであるTはヤバいぞ。流石に、逆らうな』と、命令を出した神話生物対策委員会。

 依存する対象を持つ者は、気楽だし、気が大きくなる――というのも、人間という脆弱な種が持つ特徴の一つ。

 徒党を組むだけで強くなった気になるのと、本質的には同じ。

 徒党を組むとき、人は、ほぼ必ず、その集団の中の『リーダー』を生み出す。

 命令系統を一本化させた方が効率よく強大な集団になれると本能レベルで理解しているから。

 強いリーダーを求め、強いリーダーに依存し、強いリーダーに奉仕することで、自分という個を、集団の中で確立させる。

 その流れを経た個は、群の中の歯車として、盲目的に回り続ける。


 Tという地盤を得た『神話生物対策委員会』という名の歯車は、もう止まらない。

 壊れるまで、ただひたすらに回り続ける。


 ――カンツは、別に頭が悪いわけでも、情報に疎いわけでもない。

 だから、独自に集めた『Tの情報』に対し、『ああ、なるほど。こいつは、確かに、そこそこヤバそうだな』という結論にいたる。


 カンツは、一見、猪突猛進の考え無しに見えるが、実のところは、おそろしくクレバーで、その頭脳は、いつだって、無数の未来を見据えている。

 だから当然、『ウワサを全て信じる』ような愚かしさをみせることはない。

 ちゃんと、精査して、尾ひれを無視することができる視点を持っている。

 だが、どれだけ、尾ひれを取り除き、三枚におろしても、それでも、強大に見えてしまうほど、Tのウワサは大きくなりすぎていた。


 カンツは考えた。

 Tと全面抗争に入るべきか、

 それとも、とりあえず、傘下に加わっておくべきか。

 悩んだ末に、


『そのTとやらの目的が、【悪意を振りまくこと】だったならば、ラスボス認定して叩き潰すところだが、今のところ、大きな問題を起こしているわけでもないし、何か、ヤバそうな闇が見え隠れしているわけでもない。もし、ワシと同じく、正義を胸に抱き、世界の安寧を主目的としているのであれば、別に、無理して敵対する必要もないだろう』


 という最終結論にいたり、


『ワシの正義執行を邪魔しないのであれば、命令系統の最上位と認識してやってもかまわない。ただし、歪んだところや、腐ったところが垣間見えたら、即座に叩き潰す。ワシの監視の目を甘く見ない方がいい。隠れて悪行ができるなどと、決して思わぬことだ』


 という声明を出した上で、

 『現行の神話生物研究会』は、名実ともに、正式に、『T300人委員会に所属する神話生物対策委員会の実行部隊』という地位に落ち着いた。


 『カンツの鬱陶しさ』と『姿の見えない支配者Tに対する畏怖』から、神話生物対策委員会は、『正常さを前面に押し出すクリーンな裏組織』として生まれ変わる。


 ――これまでの『神話生物対策委員会』は、ハッキリ言って傲慢だった。

 『我々は人類を守ってやっている高次存在であり、それがゆえに、我々が社会的王者で在り続けるための、世界に対するあらゆる搾取が許される』という方針で、これまでの神話生物対策委員会は動いていた。


 携帯ドラゴンという、圧倒的力を得た万能感。

 しかし、その栄華は高校三年間というわずかな時間で失われてしまう。

 残るのは、力の大半を失った携帯ドラゴンと、元ヒーローという過去の栄光だけ。

 万能感を失った『元人類の救世主たち』は、その喪失感を埋めるために、『神話生物対策委員会』という『ほとんど空っぽの組織』にすがりつき、『神話生物研究会』のコントロールと、世界に対する実質的支配という『マウント』だけに固執する。


 それがゆえに、カンツは、反発していた。

 精神的潔癖であるカンツは、神話生物対策委員会の歪みをまっすぐに嫌悪していた。


 神話生物対策委員会は、カンツから『お前らヤバいぞ』『潰すぞ』と脅しをかけられていたため、これまでは『カンツが卒業するまではおとなしくしていよう』と、あらゆる手を控えていた。


 そこそこバチバチにいがみあっていたカンツと神話生物対策委員会だったが、

 ――『新しい支配者』を得たことで、その関係性も解消され、

 現在は、かなり良質な関係に到っている。



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