40話 神話生物対策委員会と、神話生物研究会の関係性を語ろう。
40話 神話生物対策委員会と、神話生物研究会の関係性を語ろう。
……本来であれば、『確実性が高く安全な策』であるところの、『現行メンバーに対する、Tの抹殺命令』を出すのだが、しかし、現在の現行メンバーである『25人の神話狩り』は、全員、自己中心がエグい、まったく命令を聞かない連中だった。
『気の弱いヤツ』も何名かいるが、しかし、そういうやつらですら、『命令』に対して反抗的な態度を示してきた。
神話生物対策委員会は困っていた。
『卒業後も保有できるアイテム』もいくつかあって、
特別な金庫に、有用なアイテムを保管しているため、
『まったく抵抗できない』というわけではないのだが、
しかし、それらのアイテムは、どれも大したことがなく、
『イカズチを落とせる』級のアイテムは存在しない。
落雷スイッチは、実のところ、えげつないほどのレアアイテム。
GOOを殺せるレベルというだけでも、異常性が段違い。
なんせ、『観測された出力』は、『最高位携帯ドラゴンの異次元砲』を超えていたのだ。
そんなものを操るTに、『ザコアイテム』と『初期ステの携帯ドラゴン』しか持っていない卒業生たちに対抗する術などない。
そもそもにして、強大な龍脈が渦巻いている時空桐作でしか、基本的に、強大なアイテムは使えない。
外で使えるのは、ちょっとした手品レベルが精々。
神話生物対策委員会が所有するザコアイテムの中には『雷を発生させることが出来るオーパーツ』もあるが、龍脈の薄いところで使うと、静電気程度の出力が限界。
龍脈渦巻くところで使っても、奉仕種族を痺れさせるぐらいが精々。
Tが持つ落雷スイッチは、明らかに規格外のウルトラレアアイテム。
神話生物対策委員会は、ハッキリ言って、そこまで大きな力をもっているわけではない。
――『軽い奇跡を起こせるアイテム』を大量に保有していることと、一応、携帯ドラゴンを召喚できるということと、元々、先輩として、携帯ドラゴンを駆り、世界を守ってきた優秀な集団であり、かつ、実質的に、世界を裏から操っている組織ということもあり、これまでは、どうにか、時空桐作学園の実行部隊『神話生物研究会』を支配下におく組織として機能していた。
――『卒業後は、強力な携帯ドラゴンを手放さなければいけない』という事実があるため、現行メンバーも『今、強大な力を持つ携帯ドラゴンをもっているから』といって、『好き放題』するわけにはいかない。
なぜなら、卒業後の進路が危うくなってしまうから。
逆らわなければ、世界を裏から操るメンバーの一人に確定でなれる。
だから、現行メンバーも、基本的には神話生物対策委員会に従順。
たまに逆らう『自我の強いやつ』も出てくるが、そういうやつは、委員会が総力をあげて叩き潰す。
相手が一人か二人なら、これまでに集めた大量のオーパーツを駆使すれば殺すことは可能。
わざわざ自ら手を下さなくとも、『懐柔した現行メンバー』に始末を頼むことも出来た。
最悪、卒業まで待ってボコボコにする。
委員会は、時空桐作内限定だが、携帯ドラゴンに『武力的な意味で対抗』できるアイテムも、数こそ少ないし、使い捨て型ではあるが、一応、保有していないこともない。
委員会の研究会に対する支配体制は、最低限ではあるが、一応、整っていた。
――が、カンツが、『現行の研究会リーダー』となったことで、『時空桐作の神話生物研究会』は、『誰にも制御できない組織』になってしまった。
カンツは、自分の正義に没頭する男。
誰の命令も聞かない。
常に、自由で、ワガママで、強大な背中。
それがカンツというイカれた男の筋。
『卒業後に痛い目を見るぞ』と脅したところで、そんな脅しを聞く男ではなかった。
それに、カンツの求心力を考えると、普通に、有能なメンバーを懐柔して、卒業後も、携帯ドラゴン以外の部分で、強大な地盤をかためて、逆に、神話生物対策委員会をぶっ潰しにくる可能性があった。
ゆるぎない信念を胸に抱く超天才の暴走機関車カンツ・ソーヨーシを率先して敵に回すほど、神話生物対策委員会は愚かではなかった。




