33話 誇りだけは思い通りにならんぞ。
33話 誇りだけは思い通りにならんぞ。
センピースは、次第に、合体によるデメリットとも対話しはじめていた。
自分自身の何が弱体化されていて、どこを補えば、合体している今の『自分』を支えることができるのか。
必死になって考えて、修正して、調整して、センピースという概念を成立させようと努力している。
感情の阻害があるので、完全調和することは出来ないが、しかし、そこが無理だからといって、何もかもが全部ダメになるわけじゃない。
それを証明しようと必死。
破格の資質を持つ二人が、全身全霊を賭して、『ゆがんだテメェを整えよう』と頑張っている。
だから、届く。
その努力は『象』になる。
――今もなお、戦闘力はゴミのまま。
体の動きはニブいまま。
しかし、『出来ること』の『質』は大幅に伸びた。
複雑な連携や応用は捨てた。
『量』に関しては諦めるしかなかった。
ソレを成すためには、さすがに時間が足りない。
だから、それぞれ、『一点』に集中した。
センは、一閃のみに集中。
特殊な応用技はいっさい使わず、シンプルバニラな一閃だけを繰り返す。
田中は、パターン解析を途中で中断し、回避の精度を上げることだけに特化する。
それぞれ、単純な一点特化の性能の上昇だけを求める。
だんだんと、ダメージが増していく一閃。
余裕でジャスト回避し、カウンターの練度を上げていく田中。
相乗効果で、ロイガーに与えるダメージは増していく。
――とはいえ、さすがに、元々の存在値が低すぎるので、
まだまだ、ロイガーには、最大HPの1パーセン分もダメージを与えられていない。
グレートオールドワンの生命力をナメてはいけない。
神格のバイタリティは、どれも、エゲつない領域。
(決定打が足りねぇ……こいつが死ぬ前に、こっちの体力がつきる。田中、どうにかしろ)
(お前も、ワシの記憶とシンクロせぇや。『切り札』ならあんねん。あとは時間だけ――)
(お前との意識統合は、出来る限りしないようにしている。身体と心は合体しても、誇りだけは思い通りにならんぞ)
(誰も、一言たりとも、『おどれの誇りをどうこうしたい』とは言うとらん。説明がめんどくさいから、ワシの記憶を勝手に覗けというとるんじゃい。ホンマやったら、普通にイヤやけど、この状況やから、しゃーなしに許可したるぅ、言うてんねん。せやから、はよ、みろ、ボケカスゥ)
そこで、仕方なく、センは、田中の切り札がどんなものかと、田中の意識の中をのぞく。
(……お前、マジで、300人委員会のトップなんかい)
(……ただの実験のつもりやったんやけどなぁ……気づいたら、勝手にそうなっとった)
田中の記憶を見たことで、
『この世のいびつさ』をも垣間見たセン。
色々と言いたいことはあったが、
とりあえず、今は、
(――あと、1分か……よし、じゃあ、お前は、切り札を切るタイミングだけに集中しろ。俺の意識単騎で、あいつの足止めをする!)
(できんの?)
(もう、すでに、結構な回数、繰り返しているからな。さすがに、ロイガーのパターンは理解できた。俺は、初期能力ゴミだが、しかし、『反復練習したことなら、人並み以上に出来ることもままある系男子』なんだよ)




