32話 ワナが大量に設置されたイバラの道。
32話 ワナが大量に設置されたイバラの道。
今の田中にとって、ロイガーなど、100万回戦ったティガレ〇クスみたいなもの。
一撃を受ければ、もちろん死んでしまうが、しかし、もはや、攻撃を受けることはありえない。こうなってしまえば、負ける方が難しいレベル。
「よけるなぁああああ!!」
イライラがさらに加速していく。そうなってくると、よけいに、動きが単調になってくる。
ここから先は作業だった。
のんびりと避けて、ゆったりとカウンターを入れる。
それを繰り返すだけでも、おそらく勝てる。
だが、センも田中も、それを良しとしない人種だった。
もっと先へ、もっと前へ。
プルスウルトラが止まらない。
田中は、より深く、パターンの解析に勤しむ。
自分の中に注ぎ込まれたセンエースの夢知識を血肉に変えようと必死。
センは、いつも通り、単純な繰り返しの中で『凡夫の一手』を研ぎ澄ましていく。
どちらも、現状、『本質の部分』を失っている。
叡智に、戦闘力。
圧倒的な質量を誇っていた『支柱』を失いながら、
しかし、それでも、両者は前へ進む。
――『それが出来る者』にしか、トゥルーエンドへの道は開かない。
才能に頼るだけの者や、
挫折を経験したことがない者の前に、
この道は開かない。
おそろしく険しい道。
『レールが敷かれていない』のはもちろんのこと、舗装すらされていない。
ジャングルとか、山奥とか、そんなレベルですらない。
ワナが大量に設置されたイバラの道。
ある意味で、レールは敷かれている。
もっとも苦しくなるように丁寧ないやがらせが施された地獄のレール。
そんな道の上を迷わずダッシュしていく両者。
「一閃」
「ぬぅぉぁああああっ!」
ギリギリのところで、センピースの一閃を回避するロイガー。
冷や汗があふれ、奥歯がきしむ。
自分自身の『焦り』に対し、ロイガーは、さらなる怒りを感じる。
「なんでだぁああ……なんだ、この状況……こんな、どうしようもない虫けらに……なぜ……」
疑問を浮かべることしか出来ない。
ただ、疑問を口にするだけ。
不満をもらすだけ。
『その先の答え』に辿り着こうとしているわけではない。
だから、ただ、闇雲に、怒りを叫ぶことしかできない。
ロイガーほどの『肉体的資質』があれば、センピースを対処するなど、本当は楽勝。
ロイガーが、あと、ほんの少し優秀であれば、問題なくセンピースを殺すことが出来た。
「ぐぅう、ぐぅう、がぁああああああっ!」
叫んだ直後、グンと、出力が増す。
深い怒りで、オーラと魔力のリミッターを少しだけ外すことには成功した。
そのぐらいは、ザコでも出来る。
ただ、その程度の出力上昇では、
研ぎ澄まされてきたセンピースの相手にはなりえない。
センピースは、次第に、合体によるデメリットとも対話しはじめていた。
自分自身の何が弱体化されていて、どこを補えば、合体している今の『自分』を支えることができるのか。
必死になって考えて、修正して、調整して、
センピースという概念を成立させようと努力している。
感情の阻害があるので、完全調和することは出来ないが、
しかし、そこが無理だからといって、何もかもが全部ダメになるわけじゃない。
それを証明しようと必死。




