26話 心の中の陰ファイト。
26話 心の中の陰ファイト。
「いくぞ、ロイガァアア! この世もあの世もふくめ、三本の指に入る超人同士の合体によってのみ発動する、超絶的な可能性に震えて眠れぇええ! おらおらおらぁ! 閃拳! 閃拳、閃拳!」
と、何度か殴ってみて気づいたことは、
腕が痛むだけだった、ということ。
「くそがぁ! しかたねぇ! とっておきを見せてやる!」
そう叫びながら、
田中が回収したアイテムの一つ、
『武器が収納されている指輪』をきらめかせて、
『魔法がこめられたナイフ』を取り出すと、
「魂魄一閃!!」
と叫びながら、ロイガーの中心を、もう一度刻もうとする。
……が、
ガキィンッ!
と、当たり前のようにはじかれる。
ここで、センピースは、
己自身に対して『呆れ尽くしているような顔』になり、
(びっっくりするぐらい、戦闘力が落ちてるぅううう! え、こんな、墜ちる?! 仮想通貨の暴落ぐらい失墜しているんだけど?! さっき、必死になってあげた一閃の精度が、バカ落ちして、使い物にならなくなってんじゃねぇか! 田中、ふざけんな! お前の要素、ノイズでしかねぇ! てめぇ、運動神経、ゴミじゃねぇか!)
と、自分自身の『奥』に向かって叫ぶセンピース。
その暴言に対し、『センピースの中のもう一つ――田中の方の意識』が、自分自身に対して、
(それは、こっちのセリフでもあるんやけど。ものごっつ動きづらい。……なんやねん、これ。こんなんやったら、合体せん方が、ぜんぜん良かったんちゃう?)
(合体したら、戦闘力が下がることなんざ、百も承知! けど、俺とお前ほどの素材が合体すれば、ボーナス的な何かが発生して、単体で動くよりもマシになる……そう思っていた時期が俺にもありましたぁあああ! けど、実際のところは、運動音痴が運動音痴の足を引っ張って、マイナスが膨らんだだけ! クソがぁああ!)
(もう、解除しようや。マジでアカンわ、これ。キーコンフィングがバグったコントローラーで死にゲーやっとるみたいや。心臓に悪いにもほどがある)
(さっきから解除しようとしているが、できねぇ! おそらく、さっきの『アマルガメーションの魔カード』は『一回合体したら、しばらく解除できない』ってアリア・ギアスがくまれていたっぽい! 合体系の魔カードだと、基本的にぶち込む系のオプションだ。想定していたよりも、若干、『存在値だけは高くなっているところ』から見て、間違いない! 俺は詳しいんだ!)
魔カードは、アリア・ギアスを組み込むことで、効果を上げることが可能。
そういったカスタマイズ性の高さも、魔カードの有用性を飾る一つ。
(ああもう! くそ! 最っ悪だ! 最っっっ悪っっ! 田中、テメェ、ほんと、俺の邪魔しかしねぇな! そんなに俺が憎いのか! 俺がお前に何したってんだ!)
(逆恨みも、ええ加減にせぇよ。しまいにゃキレるぞ、カス、ぼけぇ)
(逆恨みじゃねぇええ! この俺という概念の奥底に渦巻く、正当な怒りと悲しみだ!)
(やかぁしぃんじゃ、くそかすがぁ! こんな、『精神中枢の最奥でケンカしまくっとる状態』で、魂魄がうまく機能するわけない! てか、お前のワシに対する嫌悪感は、『お前特有の小ボケ』かと思っとったけど、びっくりするぐらいマジやないけ! それも、ほんまに、塾のテストで負けただけで! ほんまに、ほんまに、ほんまに、ええかげんにせぇよ、くそがぁああ!)




