23話 メジャーリーガーは、リトルリーガー相手に本気を出せない。
23話 メジャーリーガーは、リトルリーガー相手に本気を出せない。
「惜しいな。貴様が愚者でなく、賢者であれば、私の配下としての輝かしい未来が待っていたというのに」
「お前の配下という地位に、輝かしい要素はゼロだろうが、三下カス野郎」
センは、さらにパッキパキの目を血走らせて、
「――理円・煉獄一閃――」
加速していく。
魂魄に対する理解度が増していく。
止まらない。
膨れ上がっていく。
「ぬおっ!」
ロイガーは、GOOとしてのプライドだけで、今、センの前に立っている。
別に、攻撃を受け止める意味はない。
なんだったら、最初から、センの相手をする必要は皆無。
カウンターを入れて、秒でセンを殺すことも可能。
だが、それはプライドの問題で出来ない。
『嗜虐心の強いGOO』である自分が、ザコ相手に、慌てて殺意を魅せるなど、あまりにも、みっともない。
メジャーリーガーが、リトルリーガー相手に、『手加減したど真ん中のストレート』以外を投げることは、外聞的な意味で、絶対に許されないのと似ている。
そんな『強い見栄』からくる精緻化された油断が、
ロイガーの選択肢から、回避とカウンターを奪い取る。
受け止めなければいけない。
それが、ロイガーの意地。
その意地を通した結果、
ロイガーの中心は、
「ぁっ……」
一刀両断されてしまった。
ものの見事に真っ二つ。
「……こんな……こんなワケ……そんな……」
バタリと、その場に倒れこむロイガー。
ピクピクしているその肉体に、センは、さらに、
「――魂魄一閃――」
ロイガーの『すべて』を切り刻もうとした。
……が、そこで、
ギロリと、
ロイガーの目が、センを睨む。
「ご、ゴミがぁ!」
奥歯をかみしめながら声を紡ぐ。
その直後、
ロイガーソードが消え去り、
そして、センの腹部に風穴が空いた。
何が起きたのか、センの認知上では把握することができなかった。
一言で言えば、豪速のカウンターをいただいた。
それだけ。
ロイガーがその気になれば、センを殺すことは、本当に、秒の作業。
その現実・事実を、実行に移しただけ。
「がふっ……」
腹に風穴が空いてから数秒後、
自分の身におこったことを理解したセンは、
バタリとその場に倒れこむ。
「ごほっ、がはっ……」
血を吐きながら、
センは、
「痛ぇなぁ……急に……攻撃してくんなよ……ダッセぇ神格だなぁ、おい……てめぇみたいに、見栄の一つも通せないカスが……神を名乗るなよ……神をナメんな……」
ファントムトークに花を咲かせるセン。
そんなセンの視界の先で、
ロイガーは、
「……ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
自身の中心の回復に集中していた。
粉々に砕かれていたならば再生はさすがに難しいが、
真っ二つにされただけなら、どうにか元に戻すことは可能。
必死に、集中して、回復魔法を使い尽くすことで、
どうにか、中心を元に戻したロイガーは、
怒りにまみれた顔で、センをにらみつけて、
「脆弱な虫けら風情が……私の中心に傷を入れるとは……驚いた。本当に驚いたぞ」




