22話 ロイガー様、全人類を殺してくるので、もう一度、剣を貸してください。
22話 ロイガー様、全人類を殺してくるので、もう一度、剣を貸してください。
回復魔法を使って、切断された足を元に戻すロイガー。
グレートオールドワンは、生命力も魔力も膨大。
「貴様がとんでもない偉業を成し遂げたことは事実。褒めてやろう。そして、最後に、もう一度だけチャンスをやる。全人類を皆殺しにしてこい。そうすれば、貴様は生かしてやる。ついでに、私の配下となるチャンスもやろう。どうだ。素晴らしい提案だと思わないか」
バキバキの目になっているセンは、
「はい、そう思います。ロイガー様。というわけで、もう一度、剣を貸してください。ついでに、俺の体を元に戻してください。そうすれば、全人類を皆殺しにすることができます。あなた様の配下として頑張ることもできます。というわけで、俺の肉体を元に戻し、剣をください」
「……」
ロイガーは、バカじゃない。
ギャグマンガの世界の住人ではない。
だから、わかっている。
目の前の男の魂胆。
何を考えているかが、手に取るようにわかった。
いや、ギャグ漫画どうこうとか、バカとか賢いとか、そういう前提は、もはや、まったくもって関係ない。
今のセンの目を見れば、センが腹の底で何を考えているかなど、どこの誰であっても、手に取るように分かるだろう。
ロイガーは、全部わかった上で、
「……ちっ」
ギリっと奥歯を一度、かみしめる。
センの言葉など、一ミリも信じていないが、
しかし、それでも、
「欠損治癒ランク20」
回復の魔法で、センの肉体を、五体満足に戻した上で、
あらためて、センにロイガーソードをわたす。
剣を受け取ったセンは、
「ありがとうございます! ロイガー様! あなた様のプライドと見栄に感謝を!」
と、一度、感謝と皮肉を口にしてから、
「――細転一閃――」
問答無用で、腰を落とし、
両足の踏ん張りに心を込めて、
両腕に、全身の力を流し込んでいく。
流動的に、パワーが注ぎ込まれる。
口にくわえて、首の力だけで振り回していた時よりも、
遥かに大きな力が剣に注がれている。
心が体を理解し始めている。
積み重ねてきた全てが開花しかけている。
その一撃を、ロイガーは、あえて、自分の腕で受け止めた。
魔力を注ぎ込み、硬質化させた腕で優雅に受け止めると、
センをにらみつけて、
「このバケモノめ……その脆弱な肉体で、よくもまあ、これだけ、ふざけた一撃を魅せつけられるものだ……心底から感嘆する」
そんなロイガーの感想などシカトして、
センは、
「――煉獄一閃――」
追撃の一手をぶちこんでいく。
止まらない連撃。
センエースの、現在の肉体強度を考えると、
絶対的に、ありえない一撃。
低度の神格であれば、殺すことも不可能ではないかもしれない、
――そう思わせるだけの胆力が込められた一手。
実際に神を殺せるかどうかはどうでもよかった。
そう思わせるだけの迫力がある……その事実が大問題。
ロイガーは、
「惜しいな。貴様が愚者でなく、賢者であれば、私の配下としての輝かしい未来が待っていたというのに」
「お前の配下という地位に、輝かしい要素はゼロだろうが、三下カス野郎」




