21話 気持ち悪いガキ。
21話 気持ち悪いガキ。
「――ぐぅがげっげん(龍牙一閃)――」
グンッと、のびやかに、かろやかに、センの龍牙一閃が煌めく。
センの頭の中で、カチリと、何かがかみ合った音が聞こえた。
スパ……ッ
と、何かが、確実に切れる音が世界に響き渡った。
気づいた時、ロイガーの足首は、綺麗に切断されていた。
自分の足が切られたことに気づいたロイガーは、
一度、グっと、眉間にシワをよせてから、
「……切った……のか? オーラを纏うことすら出来ないガキが……魔力を使うことすらできないガキが……口にくわえた刃物を、首の力だけで振り回して……それで……それだけで……」
心底信じられないという顔で、切断された自分の足を見ているロイガー。
その間にも、センの成長は止まっていない。
まだ上がる。
まだまだ上がる。
もっと上がある。
ここはまだ、道の途中。
必死に積み上げてきた『下地』の1%も使っていない。
まだまだ、センにはあふれんばかりの『土台』がある。
ありえないほどの時間をかけて積み上げてきたものがある。
それは全部奪われたって?
だから、どうした。
奪われた程度でなくしてしまうほど、
センエースの道程は易くない。
――だから、
「――ほーほーおぐぅがげっげん(双頭の龍牙一閃)――」
『次』に着手できる。
もっと前へ、もっともっと前へ。
煌めく刃の二連撃。
当然のように、ロイガーの肉体を刻んでいく刃。
「……ぐっ」
ここまでは、
ずっと、余裕の表情で、『虫のあがき』を眺めていたロイガー。
しかし、ここまでくると、流石に、黙って見ているわけにはいかなくなった。
「そ、そこまでだ。私の剣を返してもらう」
ロイガーはそう言いながら、
センの口からロイガーソードを奪い返そうとする。
グっと掴んで引きはがそうとするが、
しかし、
「ぐぐぎぃ……」
センは、ロイガーソードを離さない。
信じられないほどの力でかみついている。
「……常軌を逸した信念と覚悟……とことん、気持ちの悪いガキだ……」
そうつぶやきながら、
ロイガーは、指をパチンとならした。
すると、センの口からロイガーソードが煙のように消えて、
気づいた時には、ロイガーの手の中におさまっていた。
別に、腕力で取り戻す必要性は皆無。
「私の剣を、きたない唾液でべとべとにしてくれたな……まったく、本当に……」
呆れた口調で、そうつぶやいてから、
「私の肉体の傷をつけられてよかったな。私の剣がなければできなかったことだし、この通り、すぐに回復できるが――」
回復魔法を使って、切断された足を元に戻すロイガー。
グレートオールドワンは、生命力も魔力も膨大。
ちょっと傷をつけた程度ではダメージ量としては絶対的に不十分。
「――それでも、貴様がとんでもない偉業を成し遂げたことは事実。褒めてやろう。そして、最後に、もう一度だけチャンスをやる。全人類を皆殺しにしてこい。そうすれば、貴様は生かしてやる。ついでに、私の配下となるチャンスもやろう。どうだ。素晴らしい提案だと思わないか」




