18話 ぐぅがげっげん。
18話 ぐぅがげっげん。
「ぐぅがげっげん(龍牙一閃)!!」
首を豪快に振り回して、ロイガーの足首を切断しようとした。
今の肉体では、グリムアーツなど、当然、使えないわけだが、しかし、そんなことはどうでもよかった。叫ばずにはいられなかっただけ。魂にしみついた全部を吐き出さずにはいられなかっただけ。
首だけになってもかみついてみせる。
そんな気概を魅せつけたセン。
「……一応言っておくが、ダメージにはなっていないぞ」
センの龍牙一閃を足で受けとめたロイガー。
『刃が当たる前に、途中で剣を消して、自分の手元に回収する』など造作もないことだったが、しかし、ここでは、あえて、センの一撃を、その身で受け止めた。
言うまでもないが、ダメージなどゼロ。
万全の状態で、センが両手で剣を振ったとしても、ロイガーが相手だと、ダメージなど1ポイントたりとも通らない。
だから、当然、『口で加えて、首の力だけで振り回した剣』など、ダメージになりようがない。
「最後のとっておきすら、何の意味もなかったな。こうなると、さすがに、折れるか?」
という、ロイガーからの質問をシカトして、センは、
「ぐぅがげっげん(龍牙一閃)!!」
と、再度、必殺技をかましていく。
先ほどの動きでは、あまり力が入らなかった。
その反省をいかしたことで、今回の一撃は、先ほどの一撃よりも火力が高かった。
コンマ6のダメージがコンマ8ぐらいにはなった感じ。
どっちみち、1のダメージにもなっていない。
そんなことは、センも当然、理解している。
だから、反省して、『もっと力を込められる方法』を模索する。
バキバキの目で、『GOOの命を削る事』に没頭する。
とことん、心をむき出しにして、
命の壊し方だけに専心する。
ヤケクソでも、テキトーでも、玉砕覚悟というわけでもない。
消える前のロウソクが最後に強く燃え上がっている……というわけでもない。
『薄っぺらな意地』を通しているだけでもない。
『殉職する覚悟』を魅せつけているわけでもない。
正当に、必死に、前へ進もうとする。
いつだって、ずっと、どんな時でも。
正しい努力で、未来を掴み取ろうと、必死になって歯を食いしばる。
だから、
「ぐぅがげっげん(龍牙一閃)!!」
1のダメージも通っていなかった龍牙一閃が、
ダメージポイント的には1を超えるようになってきた。
それだけでも、なかなか、とんでもない偉業ではあるのだが、しかし、HPの値がバグっているロイガー相手に、1ダメージを与えたところで、どうにもならない。
――その事実についても、センは理解している。
全部、ちゃんとわかっている。
何もかも全部、明確に理解した上で、
センは、
「ぐぅがげっげん(龍牙一閃)!!」
すでに、疲労骨折でヘシ折れそうなほど首を酷使している。
まだ折れていないだけで、普通に頸椎を痛めてしまったため、全身にわたって、激痛が酷い。
脊髄の損傷で、自律神経と脳脊髄液が終わった。
視界がグニャグニャになっていて、すべてが二重にも三重にも見える。
このまま死んでしまいたいと、自分の奥にいる弱い自分が叫んでいる。
もう勘弁してくれと、のたうちまわりながら泣いている。
そんなものは全部シカト。
『自分のちょっとした弱さ』に付き合ってやるほどヒマじゃない。
手前の苦悩や激痛など関係ない。
どうでもいい、そんなもの。
――今、この鉄火場で、センエースにとって必要なものは、ただ一つ。




