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15話 諦めの悪さが、本当に、異常レベル。


 15話 諦めの悪さが、本当に、異常レベル。


「俺にとって大事なのは俺の命だけだ。比較的大事な方だった母親はすでに死んでいるし、父親のことはどうでもいい。仲間も友達も存在しないし、世界に優しくしてもらった記憶もない。こんな世界、どうだっていい。全人類が死滅したところで、俺は何も困らない。俺が死んだら、すげぇ困るけど」


 などと言いながら、センは、ロイガーの横を歩く。

 ――この一瞬に、全てを賭けるセン。


 魔力もオーラも使えないから、なんのブーストも出来ないが、しかし、『全身全霊』という名の『生命体に許されたリミッター解除のスイッチ』を押して、センは、ロイガーソードを、ロイガーの首めがけて振り上げた。

 『首を斬り飛ばす程度』でGOOを殺せるとは思えないが、しかし、

 とにかく、今の自分に出来る全部を賭そうと命をきらめかせたセン。


 『出来るかどうかはどうでもいい、とにかく実行する』という玉砕覚悟のギリギリ精神で、センは、ロイガーを殺そうとした。

 結果は、当然、



「まさか、本当に、その奇襲が成功する、などと思っていたわけではあるまい?」



 ロイガーソードは、当たり前のように、

 『ロイガーの首に当たる直前』で消失してしまった。


 唯一の武器をうしなったセンは、

 ニッコニコの顔で、


「もちろんですともぉ! えっへっへっへっへ」


 センはまだ諦めていない。

 最初で最後の可能性――魂を込めた全身全霊の奇襲をスカされても、しかし、すぐさま、頭を切り替えて、『次の可能性』に着手する。

 『この辺の異常性』こそが、彼の持つ最大の特異性。


 『あきらめない』という覚悟を示すだけなら、『本当に追い詰められた人間の20%ぐらい』が出来る。

 その中の1%ぐらいは、死ぬ間際まで『可能性を模索するだけ』なら出来なくもないだろう。

 しかし、『全部の可能性』を、完膚なきまでに、徹底的にブチ折られていながら、しかし、それでも、まったく死んでいない目で、奥歯をかみしめることができる者はそうそういない。


 センエースは折れない。

 この終わっている状況でも、ヤケになることなく、『研ぎ澄まされた殺気』を意識の奥にしまい込むことができる。


「今のしょうもないムーブは、ロイガー様に楽しんでいただこうと考えて実行した、俺独特の、ちょっとした茶目っ気。それ以上でも、それ以下でもないですとも。ロイガー様であれば、余裕で対処できる――と理解した上で、少しでも、愚かな人間の抵抗を楽しんでいただくにはどうするべきか、そこに重点を置いた、私の斬新なユニークを、軽くご覧いただいただけ」


 道化になれる。

 どんな時でも。

 どれだけ苦しい時であろうと、

 彼は、ピエロの仮面をかぶってパラパラを踊ることができる。

 心で、どれだけ泣いていたとしても、

 表情の表層では、パッパラパーの愚者を演じることができる。


「どうです? 絶対に、何もできないカスの滑稽な失態は、面白いものでしょう? 言うまでもないことですが、当然、ロイガー様にダメージを負わせようだなんて、そんな不遜なことは、一ミリたりとも考えていませんでしたとも。ええ、当然。だって無理ですもん。最初に聞いていましたしね。あなたに剣を向けても無意味だって。つまり、さっきのは、私のイタリアンジョークにすぎません。というわけで、剣を返していただけます? あの剣がないと、全人類を殺しにいけませんゆえ。あなた様の命令を遂行できない――それは、私にとって一番の苦悶。というわけで、はい、はやく」



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