4話 フェイトファミリー大好きっ。
4話 フェイトファミリー大好きっ。
「腐ったミカンを早期に排除するのも、ファミリーの掟の一つだというのに」
シャブルンは、ナイフを取り出して、
『達人の目でも、なかなか追えない速度』で、
『センの首』を『スパッっと切断』してみせると、
――そのまま、カティに、まがまがしい笑顔を向けて、
「じゃあね、カティ。君を失うのは本当に痛手だよ。『今、殺したゴミ』と違って、君は、『ファミリーの誇り』と言ってもいいレベルの稀有な天才。その才能を失うのは、ファミリーにとって大きな損失。だから、とても悲しい。けど、仕方ない。これが、フェイトファミリーの掟だからね」
そう言うと、
カティの首を獲ろうと、豪速で距離を詰めた。
「……ぐっ」
カティは、ギリギリのところで、シャブルンの攻撃を回避した。
しかし、シャブルンは、それを見越していたように、綺麗な追撃の一手をたたきこんでくる。
「ぁあああああっ!!」
『反射的に首をかばった右腕』を、当然のようにサクっと切り飛ばされて、つい、少女のような悲鳴をあげてしまうカティ。
シャブルンは、血に染まったナイフをペロリと舐めてから、
「綺麗な血だね。本当にもったいない。なんで、父親を刺したりするかな。そんなことをしなければ、バラ色の未来が待っていたというのに」
「……バラ色の未来? 暗部の人間に、そんなものないでしょ?」
「いや、なくはないよ。というか、普通にあるよ。別に、暗部の人間だからって、日陰でこもっていないといけない理由なんかない。功績をあげれば、ちゃんと皇帝から勲章とかも貰えるよ」
「そんなもの、ほしいの?」
「ほしいね。ハクがついて、ファミリーの価値が上がる。ファミリーの価値が上がれば、報酬も待遇もあがる。優れた功績をあげて、『特級の勲章』を得た場合、『ファミリーに所属している全員』の爵位が上がったりすることもあるんだよ。素敵なことだと思わない?」
「……シャブルン兄さんって、ほんと、野心家で、そして、ファミリーが大好きだね」
「そうだね。フェイトファミリーは、ぼくの全てさ。とても大事な家族。だから、家族を傷つけた君を許せないとも思う。ゆえに、『そんな君を排斥する』という『上の決定』にも一応従う。というわけで、じゃあ、死のうか」
そう言いながら、
シャブルンは、右手に魔力を込めた。
バフ魔法も大量にかけて、準備を整えると、
確実にカティを殺せる速度を世界に魅せつける。
(――回避――不可っ――完璧な死――すごいな――)
濃厚な死の気配を前にして、カティの脳速度が加速する。
『どうにかして生き残ろう』と頭を動かすよりも先に、
『死の美しさ』に震えてしまった。
『自分は、間違いなく暗部の人間だ』、
なんて、そんなことを考えていた時のこと、
『ラリった芸術家の絵画』みたいに、
『死の一瞬』を大胆に切り取っていくガキが一人。
「だから、落ち着けって、シャブルン兄さん」
シャブルンがきらめかせたナイフを、
さっき死んだはずのガキが、ソっとつかんでいた。




