9話 田中に対するセンエースの本音。
9話 田中に対するセンエースの本音。
「どうやら、それなりに、現状が理解できている模様。グレートオールドワンの脅威は、人間のガキ風情にどうにか出来るものではない。それが理解できているがゆえに、どうにか、穏便にことを済ませようとしている……満点の行動だ。しかし、現実というのは、満点を取ったからといって良い方向に向かうとは限らない。世の不条理を教えてやろう。それと同時に、最高の誉れも与えてやる。私という、命の高みを知ってから死ぬ権利を、その栄誉を――さあ、尊い苦痛の中で、もだえ嘆くがいい」
そう言いながら、武を構えた。
まとっている覇気の質量が増していく。
どうあがいても勝てる気がしない、その輝きを前にして、センは、
「田中、詰んだわ。もう確定で死ぬから、最後に、お前に対する本音を言わせてくれ。今から届けるメッセージが、俺の『奥』にある全て……『飾り気』も『照れ』もなくした、魂の暴露――」
そこで、ニカっと、太陽みたいに微笑んで、
「俺はお前が嫌いだ。調子にのんな、くそったれ。法律がなかったら、ここまでに、何回か殺しているからな、ボケが。文句があるなら、かかってこい、カスゥ。もう、この状況だと、法律もクソも関係ないから、やるならやったんぞ、あほんだらぁ」
「……最後の最後まで、ブレんやっちゃなぁ……そこまで嫌われとるとなると、もはや、いっそ、清々しいわ」
ため息交じりにそう言ってから、
田中は、グっと両の拳をにぎりしめて、
「死ぬんは確定かもしれんけど……せめて、『最後まであがく』ぐらいはしてみようや。そのぐらいやってから死んだ方が、冥途の土産にもなるやろう」
「俺、土産は、『木刀』と『龍がまきついた剣のキーホルダー』しかいらない」
「なんというか、おどれ、厨二の擬人化みたいなやっちゃな。ええ加減、卒業した方がええと思うで」
そんな対話を交わしてから、
センと田中の二人は、ロイガーをにらみつける。
口では詰んだと言っておきながら、しかし、センの目に、諦観の色は見られない。
それを感じ取った田中は、
「セン、お前、全然諦めてへんやないか。セリフと表情が合ってない。なんやねん、お前」
「俺のセリフは、基本的に、中身ゼロだから、ちゃんと右から左へ受け流さないと心をやられるぞ、気をつけろ」
「……この学校には、いろんな変態がおるけど、その中でも、おどれがダントツやと思う」
と、どうでもいい会話をしてから、
二人はチェンソーのエンジンをふかして、
ロイガーに特攻。
両者とも、相手の首をねらって『回転する刃』をきらめかせる。
そんな両者の一撃を、ロイガーはよけなかった。
ニタニタと笑っているばかり。
チェンソー二本を首で受け止めたロイガー。
刃がギギギギギっと悲鳴をあげて、ついには、グシャァっと砕けてしまった。
使い物にならなくなったチェンソーを見つめながら、
センが、ボソっと、
「まあ、そうだろうなぁ……」
そう言ってから、壊れたチェンソーを放り投げて、
「さぁて、どうしようか……困り果てたな……田中、プランをくれ。お前が横にいると、つい安心して、思考放棄してしまう。その責任をとれ。全部、お前が悪いんだから、お前がなんとかしろ。俺は悪くない。俺は何も悪くない」




