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8話 おみそれいたしやした。


 8話 おみそれいたしやした。


「錯乱しているわけじゃねぇよ! こうなったら、『銀の鍵』で、いったん、セーブポイントにロードした方がいい! 田中、銀の鍵を探せ! そして、あとのことは、過去に戻った未来の俺に託せ! たぶん、なんとかしてくれる! 過去にいる『今を託された未来の俺』なら!」


「なんか、ものごっつ、ややこしいなぁ」


 などと悠長な会話をしている間に、ソレは召喚されてしまった。


 グニグニと、肉体を奇怪にゆがませながら、

 ジオメトリの奥から這い出てくる化け物。


「ぷはぁ」


 ソレは、緑色でムキムキのオッサンだった。

 四つ目で、背中に触手が生えていて、お腹に口がある、

 明らかに人外だが、筋肉のフォルムだけで言えば、ほぼ人間と同じ。

 だからこそ余計に不気味に感じる――そんな化け物。


「……よう、ガキども」


 バケモノは、センたちを見下ろしながら、


「私はロイガー。グレートオールドワンの一柱、生命の頂点に位置する神性である」


 と、威風堂々に言い放つ。


 そんなロイガーに、センは、

 ニヘラッと、ザコくさい子分笑いをかましつつ、指紋がなくなるほど揉み手をしながら、


「いやぁ、すさまじい覇気でやんすねぇ。おみそれいたしやした。我々のようなハナクソのなりそこないでは、影すら拝めない領域。いや、ほんと、その御威光に触れられた喜びだけで、この先の人生、どうにかやっていけそうでやんす。本日は、下界への顔見せをたまわり、感謝いたしやすぜ。これ以上、ロイガー様の貴重なお時間をいただくわけにもまいりませんので、そろそろ、お帰りいただいてもようございやす。本日は、まことに、ありがとうございました! 拍手! 田中、拍手だ、ばかもん、トロトロするな! トロトロするのはマグロだけで十分なんだよ! いやぁ、すいやせんねぇ、気がきかなくて。こいつ、人間の形はしていますけど、脳が爆裂している虫ケラでして。ゴキブリの死骸みたいなもんと思ってください。まあ、実際のところは、私も似たようなもんなんですけどねぇ。もう、ほんと、すでに死んでいるのと変わらないから、殺す価値すらないという、へっへっへ」


 と、低姿勢で、ゴミ野郎ムーブをかましているセンを、

 田中は、すごい顔で見つめていた。


「すごいな……どうやったら、そこまで卑屈になれるんや……クソ野郎っぷりが、あまりに凄すぎて、逆に、尊敬しそうになってんねんけど」


 などとつぶやく田中の視線の端で、

 ロイガーが、ニタリと笑い、


「どうやら、それなりに、現状が理解できている模様。グレートオールドワンの脅威は、人間のガキ風情にどうにか出来るものではない。それが理解できているがゆえに、どうにか、穏便にことを済ませようとしている……満点の行動だ。しかし、現実というのは、満点を取ったからといって良い方向に向かうとは限らない」


 ゴキゴキっと、一度首を鳴らすと、


「世の不条理を教えてやろう。それと同時に、最高の誉れも与えてやる。私という、命の高みを知ってから死ぬ権利を、その栄誉を――さあ、尊い苦痛の中で、もだえ嘆くがいい」



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