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6話 大量生産。


 6話 大量生産。


「俺が、なんの取り柄もないカス以下なのは事実だが、それでも、てめぇを殺すぐらいは出来る気がする。つまり、てめぇは、『頭にパンツかぶったブタ以下のカス』よりも、さらに下ってわけだ。哀しいなぁ!!」


 などとファントムトークを披露しながら、

 センは、豪快に、ある意味、テキトーに、チェンソーを振り回し続ける。


 その動きは、神話生物からすれば。すべてがトロすぎる。

 あらかた、彼我の差を理解したムーンビーストは、


「くく……最初の一撃で、確実に仕留めるべきだったな」


 ニタリと、黒く微笑んで、


「貴様の敗因は、決定的な能力不足。そして、殺意を全うする覚悟の不足! 何もかもが不足しているゴミ! だから、何も成し遂げられない!」


 気持ちよく現実を語る化け物。


 ムーンビーストは、ギラリと目を光らせて、


「命の殺し方を教えてやる。殺意とはこう使うんだ」


 そう言いながら、槍を握る手に力を込める。

 センを殺すことに集中するムーンビースト。

 そんな彼に対し、

 センは、


「文明の発展の中でも、俺が、なかなか凄いと思っているもの……それは、大量生産だ」


「あぁ?」


「何か便利なものを一つ創るだけでもすごいんだが、今の人間は、それを、大量に、誰にでもいきわたるように大量生産することができるようになった。ペットボトル一つとったって、あれを、ゼロから作ろうと思えば、かなり大変な作業だぜ。このチェンソーみたいな、複雑な機械ならなおさら。それを、山ほど大量につくることができる――人間ってのは、おそろしいね。しびれるね。憧れはしないけどね」


 センの言葉が終わると同時。

 ムーンビーストの背後から、狂気の音が響き渡る。


 ダダダダダ!

 ヴゥウウウン!!

 という豪快なエンジン音と回転音。


「ひぃいっ!」


 対処しようと振り返った時にはもう遅かった。

 チェンソーを振り上げた田中が至近距離まで突撃してきており、


「死ねや、害獣」


 センが斬った箇所を補完するかのように、高速回転するブレードを重ねるタナカ。

 多少の抵抗はあったが、しかし、切断しきれないほどではなかった。


 ピチュンっと命が終わる音を奏でながら、ムーンビーストの首が飛んでいく。


「ぎ……がっ……」


 最後の生命力を発揮して、絶望を口にする。

 が、そこまでが限界だった。

 首が地面に落ちるのと同じタイミングで、ムーンビーストの体が、糸の切れた人形みたいに、グラリと揺らいで、そのままバタリと倒れこんだ。


 命の鉄火場という緊張から解放されたコトと、巨大な命を殺したコトに対する謎の切迫感から、呼吸が乱れる田中。


 その場にへたりこんで、


「……助かった……ありがとう」


 と、センに感謝を告げる。


 その言葉を受け取ったセンは、


「感謝はいらない。借りを返しただけだ。これで、完全にチャラだ。というわけで、今後、二度と、グールの件で、俺にマウントとってくんじゃねぇぞ。お兄さんとの約束だ。……いや、むしろ、俺の方が貸しつけ料は上になったから、俺がお前に対してマウントにとれるようになったわけか。グールよりもムンビの方が強いからな。というわけで、焼きそばパン勝ってこい、五秒でな。一秒でも遅れたら、全指切断の刑に処す」


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