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5話 いつもニコニコ、外敵の背中に這いよる閃光。


 5話 いつもニコニコ、外敵の背中に這いよる閃光。


「はぁ……はぁ……」


 20回ほど殴ったところで、田中は、普通にフラつく。


 全力で20回ほど拳を振り回す――プロのボクサーなら、その程度で息を切らしたりしないが、しかし、一般人なら、余裕で酸素吸引が必要になる運動量。


 苦しそうにしている田中に、ムーンビーストは、


「脆弱、脆弱」


 と、楽しそうに笑っている。

 とにかく、ずっと楽しそう。

 弱い命をいたぶるのが、とにかく大好きというのが、ムーンビーストの特徴の一つ。

 弱い命側からすれば、たまったものではない話。


「まだだ。人間。まだあがけ。もっと頑張れ。死ぬまで頑張れ。苦しみ、疲れ果て、苦悶の表情を浮かべながら、それでも、無様に『生』にしがみつき、みっともなさを垂れ流しながら――」


 と、注文の多いサディストぶりを発揮していたその時、

 ムーンビーストの背後から、這い寄る閃光。

 ダダダダダ!

 ヴゥウウウン!!

 という豪快なエンジン音と回転音がムーンビーストの聴覚を刺激したと同時、



「――ギャアアアアアアアアアアッ!!」



 ムーンビーストは、首裏に激痛を感じた。

 グシャグシャと、肉体をズタズタにされている感覚の中で、


「がぁああああっ!」


 ほとんど反射的に、背後にいるであろう敵に向かって槍を振り回す。


「どぅおえっ!」


 超近距離にいたため、刃の部分ではなく、柄の部分にぶつかり、そのまま、横に吹っ飛んでいく閃光。

 普通ならその衝撃に我慢できず、手の中の獲物を手放してしまうところだが、しかし、歴戦の地獄マエストロである彼――センエースに、そんなミスを犯すスキはなし。


 『とてつもない腕力で振り回された棒』に吹っ飛ばされていながら、

 しかし、まったく怯むことなく、

 センは、即座に体勢を立て直し、


「俺の大っ嫌いな田中きゅんを、ボコボコにしてくれてありがとよぉお! 感謝するぜぇ! 俺、お前が、大好きだぁああ! がははははは! ひゃっはぁああ!」


 と、ラリった顔でチェンソーを振り回しながら、突撃していく狂気の修羅。


「ぐっ……このクソガキ……あやうく首がちぎれるところだったぞ……」


 怒りをあらわにしつつ、

 目の前のガキを凝視するムーンビースト。

 秒で完了するサーチ。

 ムーンビーストは、ゴミを見る目で、


「……カス、カス、カス、全項目、カス! マテリアルも魂もオーラも魔力も、すべてカス以下! なんのとりえもない下等生物の分際でぇえええぇ! この私にたてつくなぁああ!」


 田中の輝きと比べれば、目の前にいる、この『イっちゃっている目をしているガキ』は、『くすんでいる』と表現することすらはばかられるレベルでみすぼらしい。


「俺が、なんの取り柄もないカス以下なのは事実だが、それでも、てめぇを殺すぐらいは出来る気がする。つまり、てめぇは、『頭にパンツかぶったブタ以下のカス』よりも、さらに下ってわけだ。哀しいなぁ!!」


 などとファントムトークを披露しながら、

 センは、豪快に、

 ある意味テキトーに、チェンソーを振り回し続ける。


 その動きを、ムーンビーストは、冷静に対処する。

 情報処理の感覚器官で、ちゃんと動きを追っている限りにおいて、センのムーブは、トロすぎてアクビがでるレベル。

 意識の外からくる奇襲――それ以外で、センがムーンビーストにちゃんとダメージをあたえることは不可能。



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