最終話 センエースの戦闘力と、田中の天才性がないモード。
最終話 センエースの戦闘力と、田中の天才性がないモード。
「やっぱ、無理やて。てか、普通に考えてそうやろ。どないせぇっちゅーねん、マジで」
必死に考えてみたが、田中の頭脳は、現状を打破する突破口を、一ミリも見つけることができなかった。
小ボケの類ではなく、マジで、何も思いついていなさそうな、その表情を見て、
センは、ボソっと、
「……うーむ……なるほど、見えてきたな」
と、つぶやいた。
その発言を、ゴリゴリの小ボケと捉えた田中は、
「なにがやねん」
と、いつも通りのノリでつっこんでいくが、
センは、ド正面のマジメ顔で、
「つまり、この現状は……俺の戦闘力と、お前の天才性がないモードってことか……」
と、『核心をついているかもしれないっぽいセリフ』を口にした。
だから、田中も、
「……」
黙ってセンの話に耳をかたむける。
「ナイトメアマストダイを、さらに地獄カスタマイズした極悪な難易度。……正直、厳しすぎるな……ローグ型のゲームだと、『縛りのレベルを上げることで報酬を増加させる』みたいなのがあるわけだが……現状は、その感じの流れの最高位かもなぁ……俺の戦闘力と、田中の天才性を封じる。その代わり、報酬が激烈にアップみたいな……」
「現実をゲーム的にとらえるんはどうかと思うけど……」
と、前を置いた上で、
田中は、しぶい顔で、
「このままやと、クソの役にも立たん凡人二人が、『発狂もんのモンスターが湧く学校』に震えながら眠るだけなんやけど……それで、報酬がもらえるんかね」
「もらえるといいなぁ、と夢見ながら、カンツたちの完全勝利を願って毎日眠るだけの日々を過ごしたい……」
などと、
叶わない夢を見ているセン。
センさんの、これまでの人生を振り返ってみると、
そんなヌルイ結末になることはありえない。
――その現実を誰よりも深く理解しているのは、セン自身。
と、その時、
「ん?」
田中の足元に、ジオメトリが出現した。
と、思った直後、
「ちょっ、え――」
シュンッと、田中の姿が、その場から消えてしまった。
その様子を尻目に、
センは、
「ちっ…………はぁ」
舌打ちとタメ息のブレンド。
軽く天を仰いで、もう一度『はぁ~あ』と、深めのタメ息をついてから、
のんびりと、一度、ホットミルクを口に運び、
「ほーら、来た……転移のワナだ……絶対、何かしら、かまされると思ったんだよなぁ……『呑気にミルクを飲んでいたら、全部が勝手に解決』……そう思っていた時期が俺にもありましたって? ねぇよ。そんな甘い人生になるわけがないことは、最初から分かっていたさ」
んぐ、んぐ、ごっくん、
と、ホットミルクを飲み干すと、センは、
「さっき田中が殺したグールの特殊効果が遅効的に発動した……と見ておくのが丸いかな」
などと、状況を軽く考察しつつ、
「っうーん」
と、ノビをして、首を左右にコキコキっと鳴らしてから、
「さて……行くか。……天才じゃない田中なんか、カス以下のゲロだけど……たぶん、死なせたら、ペナルティ的な何かが発生するだろうし……そうじゃなくとも、あいつに死なれたら、トゥルーエンドじゃなくなるし」
などとつぶやきつつ、
センはコンビニを後にして、
「大っ嫌いなヤツが相手でも、助けなきゃいけないのが、主役の辛いところだな……やれやれだぜ」
最後にそう言ってから、
足に力を込めた。




