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106話 俺から戦闘力を奪えたら大したもんですよ。


 106話 俺から戦闘力を奪えたら大したもんですよ。


「――誰か、たすけてぇえええええええええええええええ! 誰かぁあああ! 弱い誰かじゃなく、強い誰かぁああああ! 助けてぇえええ! お願いしまぁああああす!」


 大見得を切っておきながら、しかし、音速のフラグ回収で、グールに殺されかけたセン。

 腕と足に大きな損傷を受けたが、なんとか、絶命は免れ、ギリギリのところで、逃げ出すことに成功。

 しかし、成功したのは逃げ出すところまでで、

 逃げ切るには至っていない。


 今も、普通に、後ろから、高速で、グールが追いかけてきている。

 グールの『スピードスペック』は、普通にカスのようで、一瞬で追いつかれることはなかった。

 ただ、それでも、今のセンよりは若干はやいので、

 距離はどんどん迫ってきている。

 カス以下のスペックを誇るザコ中のザコ。

 それが、現状のセンエース。


「あいつ、強ぇ! てか、俺が弱ぇ!」


 逃げ惑う途中で、センは、苦悩を叫ぶ。


「え、つぅか、なんで、俺、戦闘力が終わってんだ?! 『俺から戦闘力を奪えたら大したもんですよ』って話じゃなかったのか?! もしかして、俺が神の王になったとかいうアレは、マジで、全部、痛い妄想でしかなかったのか! やべぇな、おい! 俺って、そんな、痛い人だったの?! いや、痛い人なのは知っていたけど、まさか、ゴミカンストの向こう側にいるとは、夢にも思ってなかったわ! てか、その夢で思い知らされたわぁ!」


 『とにかく必死に叫び続ける』という現実逃避に興じるセンエースさん。

 『たかが、グール一匹すらどうすることも出来ない』という、ありえないほど惨めな状況に心底から辟易する。


「くそったれ! くそったれ! くそったれ! アホほど時間をかけて、必死になって、力を求めてきた俺が、なんで、グール一匹すら倒せないんだ! くそ、くそ、くそぉお!」


 戦闘力だけではなく、体力もないセンの体。

 息が切れて、速度が落ちる。

 それだけでも情けないのに、


「どわっ!」


 ゾンビムービーのヒロインばりに、しっかりと、足がもつれて、大胆に転倒。

 ご高齢の方なら、大惨事になるレベルの大転倒だったが、流石に、十代ボディなので、大量の擦り傷が、男の勲章になっただけで、どこも折れたりはしていない。


「どんっだけ、運動不足なんだよ、この体ぁ……っ」


 痛む足と腕の傷、そして、全身の擦り傷。


 倒れているセンの首に狙いをすまして、

 グールは、とがった爪をきらめかせた。


「うひぃいいいいっ!」


 みっともなく悲鳴をあげながら、

 どうにか、体をよじって、グールの攻撃を回避する。


 爪攻撃をよけられたグールは、

 イラっとした雰囲気を出しつつ、


「……鬱陶しいな、クソガキ。さっさと死ねよ。無駄に生き延びるんじゃねぇ」


 流暢に言葉を発するグールに対し、

 いつもの、余裕があるセンさんだったら、『キェェアァァァ、シャベッタァア』と、テンプレをかましていくところだが、しかし、今の彼に、その余裕はない。


「ちょっ、待って! ほんと、待って! 死ぬから! ほんと、死ぬから! ちょっと、マジで、勘弁して!」


 人類最大のスキル、和平交渉で、どうにか、この大問題を処理しようとするセン。

 しかし、人類最大のスキルは、スカされることが多いのが現状。

 『話し合えば解決する』というのは『非常に美しい言葉』だが、

 しかし、命の鉄火場において、その概念が通用することは少ない。

 通用することも、稀にあるのだが、通用しないパターンの方が支配的である、

 という現実がある以上は、通用しないパターンを前提として動くのが合理的。


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