2話 似た者同士の元暗部ファミリー。
2話 似た者同士の元暗部ファミリー。
「俺、目立っちゃダメなんだよね。隠密にコトを成さないといけないわけ。でも、『裏でこそこそするだけ』だと、勲章とか厳しいんだよ。というわけで、チームを創ろうと思ってさ。俺は『チームの裏方』に徹しようと思う。で、姉さんには『チームの顔』になってもらいたいわけ」
・カティを表に立たせて、自分は、彼女のチームメイトその1として立ち回る。
・素晴らしい成果を出した上で、その手側をすべて彼女に渡す。
こうすれば、秩序は乱れない。
それが、センの出した答え。
『これまでずっとゴミだとバカにされていた3歳のガキが、快刀乱麻の大活躍で、『10つ星の冒険者』まで駆け上がって、勲章を得る』……そのイカれたサクセスストーリーは、『常識という秩序』から、完全に逸脱している。
しかし、『デステニィ家の才女』であるカティの台頭なら『早熟のすごいやつ』として、『かなりやべぇ偉業』程度という『常識の範疇』におさまる。
(名声を肩代わりしてもらうってのは、個人的にもありがたい話。『表立った有名人』になりたいとは思わねぇ。俺は、静寂を愛する孤高の男なんでね)
厨二のようなことをほざいているが、
しかし、これが、センの本心でもある。
「というわけで、姉さん。ぼくと契約して、『10つ星冒険者少女』になってよ」
「悪いけど、イカれたアホと、いつまでも、おしゃべりしていられるほど、私はヒマじゃない」
「ああ、知っているよ。『父親を刺して、逃げている途中』なんだろ?」
「っ……なんで、知っている?」
「姉さんが『俺の家出を知っている』のと、まあ、似たような流れだよ」
「…………あ、そう。あんたが、そんな情報網を構築していたなんて驚きね。あんたに協力するヤツなんているとは思わなかったわ」
「姉さん。俺たちは、ルックスも才能も、まったく似ていないけど、『親が終わっている』という一点だけは酷似している。ウチの父親もそうとうクズだが、姉さんのオヤジは、さらに輪をかけてクズだ。刺されて当然」
カティの父は、『快楽変態殺人者』の素養をもっており、
ひそかに、ガキをさらってきては犯して、拷問して、殺していた。
「けど、エリート一族ってのは、厄介なもので、どんなクズだろうと手を出せば問題になる。そして、問われるのは、誰が悪いかじゃなく、どっちの身分が低いか、その一点のみ」
カティは、センと違い、非常に優秀な人材だが、
しかし、現当主とカティでは、カティの方が身分的には低くなる。
つまり、罰を受けるのはカティ。
「姉さん、俺が守ってあげるよ。俺のチームの広告塔になってくれるのであれば、姉さんの身の安全は完璧に保証する。あと、ついでに、なにか願いも叶えてあげるよ。どう? 破格の条件でしょ?」
「あんたが、あたしを守る? なに、それ。噴飯モノなんだけど」
と、『真正のバカ』を見る目で、センをさげすむカティ。
――と、その時だった。
「もっと遠くに逃げていると思ったのだけれど……随分、近くにいたね、カティ」
センの背後から、
『カティの追手』が、優雅に歩いて登場した。




