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105話 絶対に譲れないこだわり。


 105話 絶対に譲れないこだわり。


「……ここで、ダラダラと、気楽に学生生活を続けるってのは、かなり魅力的な提案だな。あのおもしれー連中と『対等の立場』……いや、俺の方が、『圧倒的に下の立場』で、学校生活をエンジョイする……理想的な流れだ。誰にもダルい邪魔をされず、自由で、なんというか、救われている気がする。独りで、静かで、豊かで……」


 崇め奉られる面倒くささと比べれば、

 モブ扱いの方が遥かに居心地がいい。


 尊いだの、美しいだのと持ち上げられるよりも、

 ゴミ以下の無能として粗雑に扱われる方がよっぽど気楽。

 これは、マゾ気質があるとか、そういう話ではなく、

 単純に、どっちの方が精神衛生的にマシかという、それだけの純粋な話。


 現状に対する満足度の高さから、

 『このままでもいいかも』と、一瞬だけ思ったものの、

 しかし、


「……ただ、できれば、シューリやアダムやミシャとかもいてほしかったし、三至や五聖や九華の連中もいてほしかったなぁ。もっと言えば、天下の面々もいてほしいし、普通に、第二~第九アルファに戻りたいって気持ちもある……そこは、譲れないところだなぁ……」


 絶対に譲れないこだわり。

 それは、誰にだってあるもの。

 センのソレは、とびきり強く重たい。

 だからこそ、多くの絶望を乗り越えることが出来た。


 逆に、ソレがない者は、『最後の踏ん張り』がきかない。


 『最後の踏ん張り』があるかないかで、ゴールの質が大きく変わってしまう。


「うん……そうだな……十席の連中と一緒に、ユルく遊んでいる日々も、もちろん、おもしれーし、ある意味で尊いが……ヘタすりゃ尊死するレベルで幸福だが……やっぱ、全員いてくれないとダメだな……崇められるのはダルくて仕方ないが……誰かが欠けている状態は、やっぱダメだろ……トゥルーエンドに妥協は許されねぇ」


 ブツブツと、『稀によく見るガチめのやばいヤツ』ばりに、大胆な独り言をぶっかましてから、


「さて、と……それじゃあ、今夜、学校に忍び込むか……たぶん、何かしら、イベントが起きるだろ……おそらく、神話生物が暴れていて、十席の連中が、それと戦っている的な展開が待っているはずだ……そして、おそらく、あいつらではどうしようもない敵が出てくる。そこに颯爽と現れるヒーローの俺。最初は苦戦するだろうが、何かしら覚醒して、敵を秒でぶっ飛ばす俺。うむ……分かりやすい流れだ。お決まりの、俺の物語だな。面倒だが、仕方がない。やってやるよ、稀代の大主役にしか出来ない、その大立ち回り。華麗に舞ってみせようか。やれやれだぜ」



 ★



 夜になり、学校に忍び込んだセン。

 適当にあたりを散策していると、


「おっ……やっぱ出たな……」


 前方に、動く物体を見つけて、注視してみると、

 それは、『奇妙な化け物』だった。


 二本足で立つ『酸で溶けた犬』のゾンビのような化け物。


「懐かしいじゃねぇか。うっすらと覚えているぜ。お前のこと……デジャブと呼ぶにはあまりにも鮮明すぎる揺らぎ」


 そう言いながら、センは武を構えた。


「……お前程度の雑魚を相手にしているヒマはない。どうせ、この後、アウターゴッドが出てきて、十席の連中をボコボコにするんだ。さすがのカンツさんやアクバートさんでも、アウターゴッドが出てきたら分が悪いだろう。――俺は、その絶対的なピンチを、主役らしく、華麗に救わないといけない。まったく……主役は辛い。やれやれだぜ」





 ★





「――誰か、たすけてぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」



 秒のフラグ回収。

 余裕でグールに殺されかけたセン。



「誰かぁあああ! 『弱い誰か』じゃなく、『強い誰か』ぁああああ! 助けてぇえええ! お願いしまぁああああす!」




 腕と足に大きな損傷を受けたが、なんとか、絶命は免れ、ギリギリのところで、逃げ出すことに成功。

 しかし、成功したのは逃げ出すところまでで、

 逃げ切るには至っていない。



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