103話 女子チームの中でも特にヤバいミネディさん。
103話 女子チームの中でも特にヤバいミネディさん。
「ぶりっこすんな、殺すぞ! あーしは、ぶりっこ女が、ゴキブリと同じぐらい嫌いなんだ!」
そこで、ミネディが、その視線を、虚空から、アンドレにうつして、
「………………殺すって言葉は、安易に使わない方がいい……わたしが反応しちゃうから……」
そう言いながら、ペロっと、自分の唇をなめるミネディ。
気付けば、ミネディの精神は、臨戦態勢に入っていた。
体は、ただ座っている状態なのだが、しかし、死の気配が高まっていく。
周囲の美少女たちは、全員、ミネディの殺気にあてられて、冷や汗をにじませた。
そこで、ドナが、
ミネディの肩に手をあてて、
「言わなくても分かっていると思うけれど、もし、その殺人衝動を暴走させたら、私があなたを処分する」
「………………大丈夫……暴走はしない……わたし……我慢できる子だから……殺したいけど……みんな殺したいけど……でも、殺さない……」
そう言いながら、
ミネディは、小さく、何度も、深呼吸を繰り返す。
特待生の美少女たちは、みんな、一癖、二癖ある変態ばかりだが、
その中でも、特に、『ヤバさ』という点においては、
彼女、『ジョー・ミネディ』がトップである。
『ありえない程の殺人衝動』をもって生まれてきた、生粋の殺人鬼。
とにかく、命を見ると殺したくて仕方がない。
『殺せるか、殺せないか』の『判断』すらしない。
『出来るかどうかはどうでもいいから、とにかく殺したい』というスタンスが彼女の基本。
世界中の、殺人鬼の殺人衝動を束ねても、彼女の殺意には届かない。
それほどの衝動を、彼女は、『根性一つ』でねじ伏せている。
『殺したい。けど、殺さない』
その自制は、
溺れるほどのアルコール中毒者が酒を我慢するよりも、
ヘビースモーカーがタバコを我慢するよりも、
女子が甘いものを我慢するよりも、
ゴリゴリの薬物中毒者が薬を我慢するよりも、
――それらすべてを合わせた我慢よりも、遥かに高い次元での『苦しい忍耐』である。
『自分の欲望を抑えつける』という点において、
彼女ほど優れた者は、他に存在しない。
優れた『数千の修行僧』が束になってかかっても、彼女の禁欲には敵わない。
彼女もまた、精神の異形種。
『ありえないほどの殺人衝動』よりも、
『それを我慢できる』という特質の方が上という、色々な意味でレアな個体。
★
――なんだかんだ、すったもんだ、あった結果、
ギリギリのところで、
女子チームはリードを守りきって勝利をおさめた。
超ギリギリの接戦を勝ち抜いたアンドレは、
「あっぶなぁ……カンツ一人に負けるところだった……15点もアドバンテージがある状態だったのに……これで、負けたとなったら、さすがに立ち直れなかった……ほんと、あのゴリラ、なんなの? ムチャクチャすぎるんだけど」
そんなアンドレの言葉に、
クウリュートが、
「まあ、でも、あのゴリラが味方だって考えたら、すごく頼もしくない? ぼくらだけでも、かなりの戦力だっていうのに、中心には『切り札』としてアレが控えている、って考えたら、正直、誰にも負ける気がしないよ」




