97話 絶対的精神的支柱。
97話 絶対的精神的支柱。
カンツという圧倒的主砲――絶対的精神的支柱が加わったことで、『センチーム(センはベンチ)』は勢いづいた。
特待生だけを敬遠する方式は、もはや使えない。
「がはははは! とりあえず、満塁ホームランで点差を埋めさせてもらうぞ!」
と、『自分がホームランを打つのは確定事項』と言い切るカンツ。
これだけの胆力を魅せつけてくれるから、チームメイトも、本気で逆転を信じて闘うことができる。
これこそ、『主軸の背中』。
文字通り、言葉通り、意味通りの、絶対的精神的支柱。
『こいつがいれば、どうにかなる』と心の底から味方全員に思わせる力。
この雰囲気・可能性は、才能・スペックどうこうだけでは漂わない。
どんな状況でも不敵に笑って見せて、常に、大胆不敵な大言壮語を叫び続ける。
――そうやって『積み重ねてきた狂気の覚悟』が、味方の中心を支える『心の柱』となる。
ダリィも、そこそこのレベルで『その器』をもっているが、カンツと比べると、どうしても、まだまだ足りないと言わざるをえない。
女子チームの要である捕手のジャクリナは、
まるで、当然のようにスっと立ち上がる。
「……悪いけど、カンツと勝負する気はない。『満塁』だろうと『ランナー無し』だろうと関係ない。仮に、点差が開いていなかったとしても関係ない」
大きく外したクソボール球。
敬遠をくらった打者は無力。
――そんな常識など、カンツには通じない。
「がははははははっ!!」
驚異の跳躍力と、イカれたパワー。
大きく外されたボール球に飛びついて、
足の力も腰の力も頼らず、
純粋な腕力だけで、
カッキィイイインッッ!!
と、豪快にサク越をかましていくカンツ。
――実際にやってみれば分かるのだが、
飛びあがって、腕だけでバットを振っても、ボールなんか、まったく飛んでくれない。
地面に足をつけて打つことが可能な『甘めのボール』なら、ギリギリ、常人でもホームランに出来なくはないが、ジャクリナのように、しっかりと、立ち上がり、これでもかと大きく、ストライクゾーンから離したクソボール球をホームランにするのは人間の腕力では不可能。
常識を殺していくスタイル。
それが、カンツの基本ムーブ。
「がははははは! さあ! まだまだ反撃の時間は終わらんぞぉ!」
などと叫びながらベースを回るカンツに、
ショートのクウリュートが、呆れ顔で、
「ぼく、自分のことを、かなりすごい人間だと思っているんだけど……正直、君にだけは、どうあがいても勝てる気がしないよ。腕力という点においてはね」
「ほう! 腕力以外の何かしらなら、ワシに勝てると?!」
「美貌では圧勝」
「価値観の違いだな! ワシからすれば、お前はただのヒョロガリだ! 見ろ、この美しいボディを! これこそが、本物にして究極の美貌よ! がはははは!」
そういいながら、彼女の前で、ダブルバイセップスを決めるカンツ。
もとからパツパツの上腕二頭筋が、さらに美しく隆起する。
世界中のボディビルダーが生唾を飲む極上の仕上がり。
全身にちっちゃいジープを乗せている、史上最高にきれている肉体美。




