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91話 戦力外通告。


 91話 戦力外通告。


 キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッッ!


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!」


 快音でぶっ飛ばしていくチーニュ。

 つい、悲鳴を上げてしまうダリィ。


 日常生活において、いつもけだるげで、やる気が見えず、練習中も試合中も、ダラけ切った姿しか見せていないチーニュだが、しかし、スペックは、特待生の中でも、最高峰クラスに有能。

 潜在能力だけで言えば、カンツやクウリュートにも匹敵すると言われている超天才。


 余裕でフェンス越え。

 お見事なスリーラン。

 これで、また3失点。


 この回だけで10失点。

 これで、合計15失点。


「ぐ、ぐぅ……」


 マウンド上で、地団駄じだんだを踏んでいるダリィ。

 その燃え上がるような怒りは、己自身に対してのもの。

 ふがいない自分が許せず、ギリギリィィイと強く奥歯をかみしめ、握りしめた拳からは血がにじんでいる。

 その様子を見ていたセンが、渋い顔で、ボソっと、


「体育の野球で、そこまで、悔しがらんでもよかですやん……」


 と、常識的なことを口にした。

 その発言を耳にしたダリィは、

 バチギレ顔で、ファーストまで、爆速ダッシュで駆け寄ってきて、

 センの胸倉を掴み上げ、


「こんだけボッコボコにやられて、悔しいとすら思えないなら、俺は、男なんざ、やめてやるよぉ! くそったれぇえええ! つぅか、てめぇは、悔しくねぇのかぁああ! あぁあああん?! 何度も、何度もエラーしくさりやがって、ごらぁあ!」


「悔しくねぇよ、別に。野球の練習なんざしたことねぇし。これで負けたら世界が終わるってわけでもねぇ。……あと、言っておくが、俺は、エラーしてんじゃねぇ。根本から、反応できてねぇんだよ。ミスってんじゃなくて、最初から無理なの」


 センは、どこまでもフラットな表情で、


「もし、俺がゴリゴリの高校球児だったら、この状況に、羞恥心を感じたかもしれんし、悔しさを感じたかもしれんが、そもそも、俺は、ガリベン系フルボッチ陰キャだぞ。体育の野球でボコられたところで、そんなもんは日常茶飯事なんだよ。その上、相手は、ほぼ人間じゃねぇし。アスリート陽キャとかいうレベルですらねぇ。あいつら、もう、お前の剛速球に目が慣れ切ってしまって、ほとんど、空振ることがなくなっちまった。特待生ってのは、ほんと、すげぇなぁ。分かっていたつもりだったが、目の前で、これだけ、スペックの差を魅せつけられると、お前らの『本当の凄さ』に対する理解が足りていなかったとハッキリわかった。あらためて、格の違いがよく分かったよ。お前も含めて、全員、超人だ。すごい、すごい」


 パチパチと、かわいた拍手をするセンに、


「相手がどれだけヤバかろうと、状況がどれだけしんどかろうと、それでも、勝利のために頑張らないと、『見えない風景』があるんだ! てめぇは、それを見たいと思わねぇのか!」


「いや、別に……」


「くそがぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



 ★



 さらに1失点が加わって、合計16失点になったところで、

 ダリィは、女子チームに提案を出した。

 中継ぎ予定のビアラと、リリーフ予定のカキマロを、

 男子チームに入れて欲しいという提案。


 さすがに試合になっていない現状を鑑みて、

 女子チームはそれを承諾。


 一番お荷物の『セン』と『紙野』を秒で除外して、

 ファーストにビアラ、

 サードにカキマロを配置。


 この状況にセンは、


「おいおいおい、俺、ついに、戦力外通告かよ。これまでも、たいがい空気だったが、ついには、『ベンチを温めるだけの背景』になってしまったか……俺のモブ力にも、磨きがかかってきたな」


 と、文句を言うが、

 当然、ダリィは鬼シカト。



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