90話 女子チームも、全員、変態。
90話 女子チームも、全員、変態。
「くくく。ダリィさんよぉ、どんなに苦しいときでも、『それでも』と叫び続けるのが、お前の流儀なんだろ? だったら、ほら、笑えよ、ダリィ。この終わっている状況でも、勇気を叫んでみせろよ。ほれほれ。どうした。元気がなくなってきたぞ? 大変だなぁ。かわいそうだなぁ。おつかれぇぇえい!」
試合は、一方的な惨劇となってしまった。
ダリィは、この絶望的な状況でも、折れることなく、必死になって、『エースで四番』の仕事を務めようとした。
チームの要。
キャプテンであり、監督であり、コーチでもあり、応援団長でもある。
そういう、すべての責務を一身に背負い、必死になって、この絶望的な運命に抗った。
しかし、
「ちょっとぐらい、手加減しろや、クソ有能女どもぉおお! チーム力の差を考えろぉおお! まともにやったら、こうなるのは分かってんだろうがぁああ! 人の心がねぇのか、てめぇらぁあ! 鬼畜にもほどがある! コールドまっしぐらじゃねぇか、くそったれぇええ!」
3回表の守備の途中、
7点取られたところで、
ダリィは、女子チームのベンチに向かって本音を叫んだ。
そんなダリィの叫びに、
女子チームの主砲、『特待生異常体力組代表の一人』であるクウリュートが、
「ぼくらみたいな、か弱い乙女チームに手加減なんかされたら、君らの男としてのプライドがズタズタになってしまうじゃないか。それは、さすがに忍びないよ」
と、ニタニタしながら、そんなことを言ってきた。
ダリィは、ワナワナと震えながら、
「ほんと、てめぇは性格が悪いな、おい……」
「ぼくは、特待生の中でも、飛びぬけて美人だからね。特待生の中だけじゃなく、世界中みわたしても、並ぶ者がいないレベルの突き抜けた美貌を持つ。世界で一番美人ってことは、世界で一番性格が悪いってことさ。『性格のいい美人』なんていう矛盾した存在は、この世にいないから」
「お前の理論、絶対に間違っているからな。『この世の中に絶対はない』とは、よく言う言葉だけれど、これだけは絶対だ。お前は、絶対に間違っている」
などと対話していると、
そこで打席に立っているチーニュ・フォンドボーが、
「どうでもいいけど、さっさと投げてくれない? バットもって立っているだけでも、疲れるんだから……ほんと、気がきかない男……生きる価値なし。死罪」
と、だらけた態度と、冷めた口調で、けだるげにそう言った。
「ちょっと投げるのが遅れただけで、死を求めてくるお前は、絶対に、裁判官とかになっちゃいけない女だな」
と、渋い顔でそう言ってから、
ダリィは、いつもの豪快なフォームで渾身の一球を投げ込む。
かなり会心のリリースで、しっかりとしたコースに決まった入魂。
そんな、今のダリィにとって最高格の一球を、
キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッッ!
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!」
快音でぶっ飛ばしていくチーニュ。
つい、悲鳴を上げてしまうダリィ。




