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86話 ガチでくるワルキューレ。


 86話 ガチでくるワルキューレ。


「打てないにしても、少しぐらい、ファールで粘るとかしてみろやぁああ!」


「あのなぁ、ダリィさんよぉ。マウンドにいる、あの青髪のラリったお嬢様は、しょっぱなから、アホみたいに曲がるカーブでタイミングを外してきて、その後、インハイのシュートで俺の体を起こしてから、150キロのスライダーをアウトローにぶちこんできたんだぜ。野球ド素人の一般生徒であるこのセンエースさんに、その鬼神みたいな配球を華麗にさばけって? チンパンジーに東大受験させる方が、まだ可能性があるってもんだ」


 その後、

 2番のグレイも、余裕の三球三振をかまして、

 ダリィをさらにキレさせる。


「お前は、特待生だろうがぁああ! なに、一般人と同じ無様を決め込んでんだぁあああ!」


「だから、何度も言っているだろう! 僕は、君らと違って、ほぼ一般人だって! 打てるワケないから、あんなゾーンの四隅ギリギリに、鋭角な変化球をバチバチと決められたら!」


「くそがぁ! クマートゥ! とにかく塁に出ろ! そしたら俺が返す!」


 ダリィの要請に対し、

 クマートゥは、一度、寡黙にうなずいてから打席に立つ。


 センやグレイとは違い、

 クマートゥは、エバの七色の投球に翻弄されることなく、

 じっくりと立ち向かい、最終的には、


 キンッ!


 当たりそこないのゴロが、サード方向の塁線上、良い感じのところに飛んだ。

 サードのミネディが、飢えた豹みたいな、低姿勢の爆速で距離をつめ、

 そのまま、素手でつかむと、体をギュッっとひねってファーストへ送球。

 その送球を、カンパネルラが目一杯の最短でキャッチ。


 完璧の向こう側にある守備だったが、

 しかし、クマートゥの足の方が上回った。

 なかなかの巨体だが、俊敏性は素晴らしく、

 ギリギリのところで、ヒットをもぎとった。


「さすがだ、クマートゥ! グレイのくそったれとは、格が違う! あとは任せろ! 2点はもらったぁ!」


 と叫ぶダリィ。

 しかし、ジャクリナは、そんな彼の気合いに水を差す。


 なんと、体育の時間だというのに、

 捕手のジャクリナは、当然のように立ち上がった。

 敬遠である!

 『一番やっかいなダリィ』には、そもそも打たせない!


「ちょっ、待てごら、ジャクリナぁああ! いや、それは無しだろぉおお!」


 と、叫ぶダリィに、ジャクリナは、淡々と、


「あなたと勝負するメリットがなさすぎる。ちなみに敬遠するのはあなただけじゃない。5番のスカーも敬遠して満塁策をとる。それが最善。勝利を求めるなら、絶対の一手。特待生が4人しかいないのであれば、3人までは歩かせてもいい。2点のアドバンテージがある状況だから、ランナーがいない状態なら勝負するけど、ランナーが出てしまった以上、もう勝負はしない。失点する確率を出来る限り下げるために行動するのが、捕手兼監督である私の仕事」


「……ぐぬぬぅぅ……」


 ギリっと奥歯をかみしめるダリィ。

 ジャクリナは、本気で勝利を目指して行動している。

 だから、ダリィは何も文句を言えない。



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