85話 チーム・ワルキューレの猛攻。
85話 チーム・ワルキューレの猛攻。
「セェエエエン! お前、やる気、あんのかぁあ! ただのド正面ライナーだろうがぁああ! あんなもん、寝ててもとれるだろうがぁああ!」
「見せてくれよ、ダリィさんよぉ。寝ながら、さっきの弾丸ライナーをキャッチするところ。出来るもんなら、ぜひ、見せてくれや。この上ない喝采と賛美を送ってやるから」
と、最初に常識を口にしてから、
「脳天に直撃したら多分死んでた級の弾丸ライナーに反射だけでついていったことを、まず褒めてくれや。話はそれからだ」
と、そんな文句を口にするセンに、
ダリィは、
「くっそぉ……カンツだったら、余裕で取れていたのに……それで、ワンナウトだったのにぃ……」
体をワナワナと震わせて、本気で悔しそうな顔をしている。
そんなダリィを横目に、
「誰と比べてんだ。一般人ナメんなよ」
と、正当な文句を口にするセン。
――以降も、ダリィは、必死に魂の投球を続けた。
本気で勝利を求めて貪欲に。
その結果、どうにか、チーム・ワルキューレの猛攻を、最少失点でしのぎきった。
「2点とられたぁあ! くっそぉおおおお!」
と、嘆いているダリィに、
セカンドを守っていたグレイが、
「いや、普通に上出来だって。僕、正直、一回表が永遠に終わらないんじゃないかなぁって不安だったから」
「俺のことナメすぎだろ、ごらぁあ!」
「何度も言うけど、ダリィをナメているんじゃなくて、向こうがヤバすぎるだけだって」
★
センチームのトップバッターは我らのセンさん。
センは、バッターボックスの横で、軽く素振りをしつつ、
不遜な表情で、エバを見つめ、
「悪くないぞ、エバ。お前の投球は見事だ。お前が積み重ねてきた研鑽は、充分、俺に届く。だから、全力で――」
そう言いながら、打席に立ったセンは、
予告ホームランのポーズで、
――俺に負けるがいい――
「ットライィイッ! バッ、アゥッ!」
見事なフリオチで、秒の三振を決め込んだセンさん。
あまりにも美しい瞬殺劇。
帰ってきたセンに、
紙野が、
「おそろしくはやい三振。俺でなきゃ見逃しちゃうね」
「いつ聞いても惚れ惚れするセリフだねぇ。間近でそのセリフを聞きたいがために、俺は、わざと三振をするのかも」
などと、テンプレでじゃれあっている二人の間に、
「おい、ごらあああああああああああああ! セェエエエエエエエエエエン!」
無粋にも割って入ってくるダリィ。
センの胸倉を掴み上げて、
「打てないにしても、少しぐらい、ファールで粘るとかしてみろやぁああ!」
「あのなぁ、ダリィさんよぉ。マウンドにいる、あの青髪のラリったお嬢様は、しょっぱなから、アホみたいに曲がるカーブでタイミングを外してきて、その後、インハイのシュートで俺の体を起こしてから、150キロのスライダーをアウトローにぶちこんできたんだぜ。野球ド素人の一般生徒であるこのセンエースさんに、その鬼神みたいな配球を華麗にさばけって? チンパンジーに東大受験させる方が、まだ可能性があるってもんだ」




