83話 どんな時でも、常に、本気で勝利を目指し続ける。そうじゃなければ、たどり着けないステージがあるんだよ。
83話 どんな時でも、常に、本気で勝利を目指し続ける。そうじゃなければ、たどり着けないステージがあるんだよ。
「あの狂ったワルキューレたちを相手に、この『一般人が半分以上をしめているチーム』で勝利を求めるのは、さすがに無理がある。俺も、どちらかといえば、諦めないことに定評がある男だが、今回ばかりはお手上げだ。家に帰ってのんびりミルクでも飲んでいやがりたい」
などと嘆いているセンの視線の先で、彼女たちは、超絶技巧のオンパレードをかましていく。
カンパネルラの完璧な開脚は、美しさを超えて狂気を感じさせた。
セカンドとファーストの距離を最短にするそのムーブ。
全員で、コンマ数秒を刻んでいく、勝利のための努力。
ウルテクにウルテクを積み上げて遥かな高みを目指す。
「見ろ。あいつらのあの動き。俺、あの辺の動きって、メジャーのオールスターどころか、もはや、絶頂期のドカ○ンでしか見たことねぇよ。あいつら、ほっといたら、たぶん、今日の夕方ぐらいまでには、ドラベ○スの領域にまで足を踏み入れていると思うぞ。ピッチャーのエバは、ホワイトボールを投げていると思う。で、明日辺りにはワールドボールを投げているだろうな」
そんなセンの言葉に、ダリィは、
一度、
「ふんっ!」
と、気合の感嘆詞を口にしてから、
「あいつらが天才で努力家なのは知っている。それでも勝利を求めるのが、勇者ってもんだろう。俺は、守られる一般人じゃねぇ。一般人を守る勇者サイド。だから、折れる訳にはいかねぇ。どんな絶望も、劣勢も、鼻歌交じりにぶっ飛ばす」
「な、なぜ、体育ごときで、そこまでの覚悟を……」
「どんな時でも、常に、本気で勝利を目指し続ける。そうじゃなければ、たどり着けないステージがあるんだよ」
★
両チームオーダーを発表。
・特待生女子チーム。
ピッチャー エバ・マイマイン・ツンデレラ。
キャッチャー ジャクリナ・ジストメナ。
ファースト ジョー・カンパネルラ。
セカンド エキドナール・ドナ。
ショート クウリュート・ヤマティ・A・ノーロッチ。
サード ジョー・ミネディ。
ライト アンドレ・アルトマ・O・ノッカイ。
センター チーニュ・フォンドボー。
レフト カーミライム・ヘルファイア。
中継ぎ ビアラ・モスト・D・アークホーン。
リリーフ カキマロ
・特待生&一般人混合男子チーム
ピッチャー ダイナマイト・ダリィ。
キャッチャー クマートゥ
ファースト センエース。
セカンド グレイ・アルトマ・O・ノッカイ。
ショート ミケランジェイル・スカー。
サード 紙野ボーレ。
ライト 田中シャインピース。
センター 佐藤ツカム。
レフト 鈴木ホウマ。
★
センチームの後攻で試合は始まった。
マウンドに上がったダリィは、小柄な体をフルで躍動させる豪快なトルネード投法で、爆速なストレートをクマートゥのミットにぶち込んでいく。
時速にして155キロオーバー。
プロの速球派クローザー級。
その様子を、ファーストで見ているセンは、呆れながら、
「お前ら、マジでなんなんだよ……」
ボソっと、そうつぶやく。
野球に詳しいわけではないが、
『タ○チ』や『ダイヤ○エース』や『大き○振りかぶって』など、野球漫画は多少読んでいるし、パワ○ロをたしなんだこともある『普通の男の子』であるセンさんは、
『野球の常識』というものを、ある程度は理解している。
だから、目の前のマウンドに立つ非常識な男の存在に唖然とするばかり。




