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82話 狂ったワルキューレ。


 82話 狂ったワルキューレ。


「気合が足りていない雑魚を『本気』にさせるには、魂のハッパをかけるのが一番ってのが、俺の流儀だ……それ以外の方法もあるにはあるんだろうが、得意じゃねぇ。苦手なことを補完するより、得意なことを伸ばすのが俺の生きざま。『ちょっと怒鳴られただけでビビって委縮するようなやつ』をどうにかする手段を持ち合わせていない以上、俺は俺のやり方で、勝率を少しでも上げるために、あがき、もがき、苦しみ続ける。――それが、俺の最善だ」


 センにも勝るとも劣らない、まっすぐな目で、そう言い放ったダリィ。

 『納得』がいったセンは、

 ダリィの胸倉から手を離して、


「お前が本気なのはわかった。けど、この試合での勝利を求めるのは、さすがに無謀だと言わざるを得ない。みてみろ、向こうのチームを。やべぇぞ、あいつら。メジャーのオールスターみたいな動きしてやがる。今、俺は、普通に引いている」


 チラっと、

 特待生女子チームを見つめるセン。


 チームの監督であるジャクリナの『ノックの腕前』からして次元が違った。

 難しいところに、難しい速度で、正確に打ち分ける技術。

 それを『マシンガンノック』でかましているという神業。

 才能ある者が、毎日、ノックの練習だけを延々にし続けても、

 今のジャクリナと同じ領域に辿り着ける日は遠いだろう。


 そして、そんなジャクリナの、鬼テンポな厳しい打球を、完璧なムーブでさばいていく内野陣。

 イレギュラーバウンドすらも、イカれた反射神経でサクっとついていくその様は、熟練のメジャーリーガーが嫉妬するレベル。



「クウリュート、一歩目がコンマ5秒遅い。バットの角度から打球を予測してくれる? カンツやアクバート級の打球だと、その速度では、たぶん、おいつけないから。ドナ、空気の湿度や圧力、グラウンドの土の状態や、石のバラつきから、イレギュラーも予測して対応して。あなたたち二遊間が守備の要だから、常に、『完璧』を『置き去りにした領域』を求めて」



 ジャクリナの指導を受けて、

 さらに練度を上げていく特待生女子チーム。


 その様を見たセンは、


「見ろ、あいつらは、もはや俺たちを見ていない。『ここではない、どこか遠く』を見つめている。見つめているっつーか、ジックリと腰を据えてガンをつけていやがる。おそらく、俺達を秒で飛ばしたあとで、野球の神様あたりと、終末をかけた最終戦争でもするんじゃないかな?」


 彼女たちに対するドン引きをいっさい隠さずに、

 続けて、


「あの狂ったワルキューレたちを相手に、この『一般人が半分以上をしめているチーム』で勝利を求めるのは、さすがに無理がある。俺も、どちらかといえば、諦めないことに定評がある男だが、今回ばかりはお手上げだ。家に帰ってのんびりミルクでも飲んでいやがりたい」


 などと、センが嘆いていると、

 そんな彼の視線の先で、

 クウリュートが、『二遊間を切り裂かんばかりのエゲつない打球』をダイレクトキャッチ。

 そのままウルテクのキツツキトスでセカンドに送球。

 それを助走しつつ、利き手でダイレクトに受け取ったドナは、

 セカンドベースを踏んでから、

 『世界記録でも狙ってんのか』ってレベルの速度でファーストに送球。


 その超送球を、『歴史に名を刻むレベルのプリマ』にハンカチを噛ませる完璧な開脚で、目一杯、伸びに伸びた姿勢でキャッチするファーストのカンパネルラ。


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