表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

665/1228

81話 特待生も一般人もバカばっかりのチーム。


 81話 特待生も一般人もバカばっかりのチーム。

 

「ナメてんのか、てめぇええ!」


 と、ゴリゴリのキレ顔で、そう叫ぶ。ダリィは小柄だが、腕力はハンパじゃない。

 殴り合いの実力は、特待生の中でもピカイチというアタッカー。そんな彼に、胸倉を掴まれていながら、しかし、センは、1ミクロンたりともビビりのない目で、


「これが、お前の言う『勝つための最善』か?」


「あぁあ?」


「この試合限定の話だが、俺は、お前のチームメイトだ。いやでも『戦力の一つとして使わなければいけない』という絶対的な前提条件がある。その俺の胸倉を掴んで殴って殺すのが、お前の最善か? と聞いているんだ」


「近距離で、かつ、逃がさずに対話するために、とっ捕まえているだけで、殺す気なんざ、1ミリもねぇわ、ボケがぁああ! 人をなんだと思ってんだ、かす、ごらぁ!」


「殺す気はない? じゃあ、俺みたいな『運動偏差値48のやつは使えないから、サクっと殺して、別の運動能力が高いやつを補充してチームの総戦力を上げる』――という作戦ではないということか?」


「そんなわけ、あってたまるかぁ!! てめぇ、ほんと、俺のことをなんだと思ってんだぁああ! お前を殺して他のヤツを補充って、それを実行したら、『隕石が落ちてくる』の法則と同じで、普通に没収試合だろうがぁあ! 特待生も、一般人も、バカばっかりか、このチームぅ!」


「じゃあ、お前の行動は、無意味に『威圧しているだけ』ということになるな。俺は、精神の異形種と名高い真正のキチ○イだから、お前に威圧されたとしても、問題なく歯をむき出しに出来るが、普通のやつなら、そうはいかないだろう。お前の暴力的な行動にビビって委縮し、本来の力を発揮できなかった可能性が高い」


 そこで、センは、ダリィの胸倉をつかみかえし、


「そんな非生産的な結果が、お前のいう、勝つための最善か?」


「……」


 ただの言葉だったら、

 ダリィは、もっと言い返していただろう。

 ダリィはヤンキー風味なだけで、本物のヤンキーのように『考え無し』な『脊髄反射だけの行動をとっている』というわけではない。

 むしろ、頭の回転はかなり速い方で、センに対する反論はいくらでも思いつく。


 けれど、ダリィは、この一瞬、押し黙った。

 別に、センに気圧されたわけではない。

 ただ、センの目が、あまりにもまっすぐ過ぎたから、

 その瞳に特殊な興味を抱いてしまっただけ。


「黙ってんじゃねぇよ、ダリィさんよぉ。こたえてくれや」


 ダリィは『一瞬とはいえ、つい言葉を失ってしまった自分』を、

 心の中でボコボコに殴りつけ、少しだけ冷静になってから、

 センの胸倉から手を離し、


「気合が足りていない雑魚を『本気』にさせるには、魂のハッパをかけるのが一番ってのが、俺の流儀だ……それ以外の方法もあるにはあるんだろうが、得意じゃねぇ。苦手なことを補完するより、得意なことを伸ばすのが俺の生きざま。『ちょっと怒鳴られただけでビビって委縮するようなやつ』をどうにかする手段を持ち合わせていない以上、俺は俺のやり方で、勝率を少しでも上げるために、あがき、もがき、苦しみ続ける。――それが、俺の最善だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ