79話 もろもろ濃すぎる特待生たち。
79話 もろもろ濃すぎる特待生たち。
「妹と合体したら、そこそこマシになるじゃねぇか」
「合体パーツでしかないんだよなぁ……虚しいって。そのしょっぱさで、誇りは抱けないって」
「妹と合体? お前ら、だいぶやべぇこと話しているけど、大丈夫か? 倫理、息してる?」
そう声をかけると、
ダリィが、
「そっちの合体じゃねぇよ。グレイは、妹のアンドレと、フュージョンすることで、破格のスーパー戦士になれるんだ。まあ、合体したところで、カンツには勝てねぇけど」
と、そこで、ダリィの横にいるスカーが、
「いや、ダリィ、お前……何を、一般人の前で、機密事項を……」
「ガチトーンでたしなめてくるお前の、その行動の方が、問題あるっつーの。テキトーに流しとけば、ドラゴ〇ボール系のギャグですむ話だろうが。一般人が、合体どうこうを聞いて、ガチで真に受けるわけねぇだろ。考えてから言動決め込めや。俺みたいによぉ」
スカーにたしなめられたことで、
軽くキレそうになっているダリィ。
だが、さすがに、バチギレするほどのことではなかったので、
ちょっとキレかけるだけで落ち着くことができた。
ちなみに、その横にいるクマートゥは、
ずっと、寡黙に、女性チームの練習を眺めていた。
ルギルのように、日がな一日寝ているというわけではないが、
『基本、静かである』という点では同系統。
どっちも、特待生の中においては、基本的に影が薄い。
ただ、それは、どっちも、人前に出るタイプではないというだけで、能力が劣っているわけではない。
特にクマートゥは、知力も体力もハンパではない化け物。
中学までに、将棋で7冠を達成している頭脳遊戯の超人でありながら、柔道や合気道でカンツとタメをはることができるという、ほとんどナンセンスギャグ漫画世界の住人。
どれだけの高みに到っても、弛まぬ努力を続ける寡黙でストイックな男。
基本的に、特待生チームは、全員、『才能があるストイックな者』ばかり。
イカれた才能を、誰よりも真剣に、必死になって磨き続けている狂人集団。
だから、一般人では、誰も、彼・彼女らには敵わない。
立っているステージが違いすぎる。
と、そこで、
クマートゥが、
「……無理だな」
と、ボソっとつぶやく。
彼は、基本、寡黙だが、普通に落ち着いているだけで、『どこぞの変態紳士(超苺)』みたいに、『しゃべることを面倒くさい』と思っているわけではない。
ダリィが、視線を向けて、
「は? 何が?」
と問うと、クマートゥは、
ゆっくりとしたテンポで、
「……あらゆる戦術・パターンを考えてみたが……この試合で勝てる見込みはない。最初から詰んでいる」
「ようやく口を開いたかと思えば、泣き言かよ。特待生の風上にもおけねぇ野郎だな」
「……ジャクリナが指揮系統から外れれば、勝機はあるんだが……彼女が、捕手兼監督をしている限り、可能性の芽はない。彼女の頭の上に隕石が落ちてきて、この試合から離脱すれば、勝率が、どうにか1%ぐらいはなるが」
「仮に、ジャクリナの頭の上に隕石が落ちてきて、あいつが死んだら、超大問題で、100%、没収試合になるから、勝率は0%だろうが、ボケが。お前、頭いいはずだよな? なんで、ちょいちょい、ゆがんだボケを口走る? ちょっとは考えて喋れや」




